平成二十七年第一回定例会六月議会 一般質問





一 地方創生について


北林たけまさ


  1 地方創生への期待と県の役割について

 自由民主党の北林丈正です。この春の統一地方選挙で当選し、再びこの場に立つことが出来たことを大変光栄に思います。県当局には前向きなご答弁を期待し、質問に入らせていただきます。

 まず始めに地方創生について伺います。 昨年5月に日本創成会議が公表したいわゆる増田リポートは「このまま東京など都市圏への若者流出と若年女性の減少が進めば、 2040年には全国896の市区町村が『消滅可能性都市』になるとし、全国の地方自治体に衝撃を与えました。中でも秋田県は秋田市を含め、 ほぼ全ての市町村が該当しますから、ただ事ではありません

 日本全体でも人口減少は深刻で、2048年には一億人を割り込み、2060年には8700万人程度となる見込みであります。こうした事態に強い 危機感を抱いた政府は、2060年に一億人程度の人口を確保する長期ビジョンのもと、地方創生への取り組みを本格的にスタートさせました

 地方創生の目指すところは、東京一極集中の是正と人口減少の歯止めでありますが、これは秋田県が長年県政の重要課題とするものでも あります。これまで様々な取り組みをしながらも思うように効果の上がらなかったこれらの課題に、今度は「地方創生」の旗印を掲げてど う立ち向かうのでしょうか。

 政府の立ち上げた「まち・ひと・しごと創生本部」では、地方がそれぞれの特色を活かし知恵を出して「仕事」と「人」の好循環を作り 「まち」を活性化することで、人を呼び込むイメージを示していますが、地方が競い合った結果、一部の勝者と多くの敗者に分かれるよう では真の地方創生とは言えないでしょう。

 

 二月二十三日付け日本経済新聞には次のような論説がありました。「政府が旗を振るこんどの地方創生とはいったいなんだろうか。 日本列島改造論や田園都市構想など、これまでの地方ビジョンとはどうも構えが違う。そもそも国にも地方にもカネがない。人口も減っていく。 出せるのは知恵とヤル気ぐらいだ。そこで、それぞれにプランを練って『地方消滅』をはねかえす。これも政策なのだろうが、むしろ運動と 言った方がいい」という書き出しの論説ですが、なるほどそうかも知れません。

知事は、政府が進める地方創生に何を期待し、また国と市町村との間に立つ県の果たす役割をどのようにお考えでしょうか。

知事答弁


 今般の地方創生をめぐる政府の政策展開については、我が国の公的債務の増加、少子高齢化や人口減少、国際社会における経済的地位の 低下など、様々な環境変化の中で、国の地方政策についても限界が見え始め、地方に自らの力で将来の方向性を定めさせるべきという思惑 が垣間見られることは、まさに「運動」と言っても過言ではないと考えております。  

 しかしながら、地方があってこその国家であり、地方創生に向けた発意や取組を地方に促すだけではなく、国として、権限、財源、情報 などが東京に集中する構造を、大胆に改革していくことが必要であります。

 そのため、国に対しては、しっかりとした国家戦略のもと、抜本的な少子化対策の推進、企業や政府機関の地方への移転促進、地方大学 の機能強化など、実効性のある施策を国の責任において講ずるとともに、地方がその取組を深化させ、創意工夫による地方創生を実現する ための、安定的な財源の確保を期待するものであります。

 また、国や県の施策を踏まえながら、市町村が独自に地域ならではの対策を講ずることが、地方創生の基本であり、県としては、市町村の 主体性を尊重しながら、一体となって広域的な施策の推進に努めるほか、総合的な施策の調整を図っていくことが重要であると考えております。

北林たけまさ


  2 第2期ふるさと秋田元気創造プランとの関わりについて

また、県はこれまでも少子化対策に関する組織をいくつも立ち上げるとともに、県政運営の指針であるふるさと秋田元気創造プランや現在 進行中の市町村未来づくり協働プログラムに基づき、地域の活性化や活力の維持には様々な取り組みをしています。

今度の地方創生は、更に屋上屋を重ねるような懸念を持ちますが、現在進めている、第2期ふるさと秋田元気創造プランとの関わりはどの ようにお考えでしょうか。知事のお考えをお聞かせください。



知事答弁


 第2期プランは、県政のあらゆる分野に目を向けながら、六つの重点戦略と五つの基本政策で構成される県政の運営指針となる総合的な 計画であります。  

 一方、今般の秋田版総合戦略は、第2期プランの考え方を基本に据え、特に、地域の活性化や人口減少の克服に焦点を当て、 「雇用創出のための産業振興」、「移住・定住対策」、「少子化対策」及び「新たな地域社会の形成」の四つを基本目標として、今後の 5年間で取り組む具体の施策・事業や民間企業等とのプロジェクトなどを取りまとめるものであります。

 県としましては、第2期プランの施策のうち、秋田の創生に向け、特に力を入れる分野を充実させて策定する総合戦略を、国の交付金等 を効果的に活用しながら、強力に推進してまいります。




二 市町村との機能合体について [知事]


北林たけまさ


 次に市町村との機能合体と機能支援について伺います。

 知事は、人口減少が避けられない見通しの中では、県と市町村は互いに補い合い、また連携して住民サービスの提供や地域活性化の立案 をするなど、二重行政の解消を図って行かなければならない旨の発言を、度々されております。また第2期元気プランにおいては、効果的 ・効率的な行政システムを構築するため、県と市町村の機能合体等の一層の推進や、県による市町村への機能支援に取り組むことが示され ております。

 機能合体については、平成二十二年に平鹿地域振興局と横手市において、観光などいくつかの分野で、横手市と平鹿地域振興局が同一の フロアで執務を行う、ワンフロア化を始め、事務事業の移管や類似事業の連携実施などを行う、包括的な機能合体への取り組みがスタート しました。

 県はこの取り組みをモデルとして、他の地域においても各地域振興局と管内市町村が共同で研究会を設置し、可能なものから順次取り組 んでいく、としておりますが、その後こうした取り組みが始まったとの話はあまり聞こえて来ないように思います。

 平鹿地域振興局は横手市と区域が同じという特別な条件を持っていますが、複数の市町村を抱える他の地域振興局でも機能合体に向けて 準備が進んでいるものなのか、また横手市とは包括的な機能合体が進んでいるのかをお聞かせください。



 

知事答弁


 第2期プランは、県政のあらゆる分野に目を向けながら、六つの重点戦略と五つの基本政策で構成される県政の運営指針となる総合的な 計画であります。

 一方、今般の秋田版総合戦略は、第2期プランの考え方を基本に据え、特に、地域の活性化や人口減少の克服に焦点を当て、「雇用創出 のための産業振興」、「移住・定住対策」、「少子化対策」及び「新たな地域社会の形成」の四つを基本目標として、今後の5年間で取り 組む具体の施策・事業や民間企業等とのプロジェクトなどを取りまとめるものであります。

 県としましては、第2期プランの施策のうち、秋田の創生に向け、特に力を入れる分野を充実させて策定する総合戦略を、国の交付金等 を効果的に活用しながら、強力に推進してまいります。




三 投票所の減少について [選挙管理委員長]


北林たけまさ


 次に投票所の減少について伺います。

 春の統一地方選県議会議員選挙の投票率は全県平均で56.12パーセントと前回より5.06ポイントも低下しました。投票率低下の要因は政治 に対する無関心や諦め、また昨年相次いでマスコミを賑わせた地方議員の不祥事なども関係しているのかもしれません。

 しかし一方で、最近地元で良く耳にするのが投票所の減少により、投票に行けない人が増えているとの指摘です。経費の削減や立合人の 減少を理由に、県内の投票所数は近年減少しており、特に山間地の小集落においてその傾向が顕著になっているようです

 総務省によると全国の投票所の設置数は2001年の参院選の時は53439ヶ所ありましたが、昨年暮れの衆院選では48620か所と4819ヶ所も減少 し、中でも本県は減少数が全国で三位の290ヶ所に及んでいます。

 そうした中、対策に乗り出した自治体もあります。2014年12月11日付けの日本農業新聞によると、鳥取県大山町では、2005年に49カ所あった 投票所を19ヶ所に減らしたため、2009年から100以上ある集落の最寄りのバス停と期日前投票が出来る役場に無料巡回バスを走らせています。

 また東日本大震災の被災地でも、仮設住宅と投票所を結ぶバスを走らせているところがあります。

 投票所の設置数や場所については、市町村の選挙管理委員会がそれぞれ定めることとなっておりますが、中山間地が多く高齢化の進む地域 を抱える市町村では、どこも似通った状況にあり、事の重要性を考えれば、県がこの問題に対して、検討委員会を立ち上げるなど対策に乗り 出す必要があるのではないでしょうか。

 また国に対しても要望を行う必要があるのではないでしょうか。選挙管理委員長のお考えを伺います。

選挙管理委員長答弁


 本県では、有権者数の減少や投票立会人の成り手不足のほか、市町村の職員減少や経費削減などにより、投票所数が減少してきております。

 県選挙管理委員会としては、歩行が困難な高齢者等の投票機会の確保の面からも、このような状況について懸念しており、これまでも度々、 会議の場や通知等で投票所の適正な設置や、やむを得ず統合する場合の代替措置について、市町村選挙管理委員会に要請してきたところであ ります。

 県内においては、にかほ市で投票日に無料巡回パスの運行を行っているほか、6つの市でショッピングセンターに期日前投票所を設置する など、その影響を最小限に抑えるための対策を講じている市町村もあります。

 また、中山間地域における取組として、大仙市では今回の県議会議員選挙から、投票所が廃止された8箇所の集落で、短時間の期日前投票 を行っております。

 現在、総務省が設置した「投票環境の向上方策等に関する研究会」においても、投票所の減少の影響を受ける有権者の投票機会を確保する 方策が検討されているところであります。

 このような国の動きを見据えながら、今年中に市町村選挙管理委員会との会議の場を設けて、先進事例を紹介し、地域の実情に即した取組 を促すとともに、地域の総合病院や駅前周辺の複合施設への期日前投票所の設置等についても働きかけてまいりたいと考えております。

 さらに、高齢者等も含めた有権者が投票しやすい環境を作るため、投票立会人の要件の緩和や、期日前投票所の増設に係る予算措置につい て、国に強く要望してまいります。




四 医師確保の見通しについて [知事]


  1 修学資金貸与の効果の見通しについて


北林たけまさ


 次に医師確保の今後の見通しについて知事に伺います。

 本県においては、医師の絶対数の不足に加え地域や特定の診療科における偏在が著しく、地域医療の確保は県政の大きな課題となって おります。私が暮らしている北秋田市には、広大な北秋田医療圏の中で、唯一の総合病院である北秋田市民病院があり、急性期から回復期、 更には在宅医療に至るまで、地域医療の中核的な病院として、様々な機能を発揮することが期待されております。

 特に高齢化が著しい当地域においては、高齢者の方々が、出来るだけ住み慣れた地域で、その人らしい暮らしを送ることができるように、 医療や介護、福祉の関係者が連携して支えていく「地域包括ケアシステム」の構築を図っていくことが急務であり、北秋田市民病院には、 その医療面における中心的な役割を担うことが求められております。

 しかしながら、現実には、医師不足により、許可病床320床のうち、98床が休床を余儀なくされているなど、開設から6年目を迎えた現在も、 住民の期待に十分には応え切れていない状況にあります。

 こうした地域医療の現状を踏まえて、医師確保の今後の見通しについて知事にお伺いいたします。

 まず、秋田大学医学部の地域枠を卒業した医師についてでありますが、昨年度、平成十八年度に入学した第一期生4名が、ようやく臨床研修 を終えて、地域医療の現場に出たと伺っております。

 今後も、こうした地域枠を卒業した若手医師がどんどん増えていくことが見込まれるなど、将来の医師不足解消に向けて展望が開けてきて いることは大変喜ばしいことであると感じております。

 こうした地域枠卒業者など、修学資金の貸与を受けた医師は、一定期間、知事が個別に指定した病院での勤務が義務付けられると伺ってお りますが、この効果はいつ頃から具体的な形で表れてくるのでしょうか。

 地域医療の厳しい現状を考えれば、一刻も早く効果が表れることを期待いたしますが、今後の見通しについてお伺いします。




知事答弁


 秋田大学医学部の地域枠については、平成十八年度に県独自の取組として5名分を設けて以来、入学定員の増加に合わせて順次拡大してきた ところであり、今年度の入学生は24名の枠となっております。

 こうした地域枠医学生などの修学資金貸与者のうち、知事が個別に勤務先を指定できる医師数は、平成29年度までは10人台で推移しますが、 32年度には60名、34年度からは100名程度と大幅に増加する見通しであり、医師不足地域の状況改善に大きく寄与するものと考えております。

 今後、その効果がより早期に現れるよう、即戦力となる大学院生や研修医に対する修学資金の利用を促進するとともに、医師の地域偏在の 改善に向け、秋田大学や地域の中核的な医療機関等で構成する地域医療対策協議会での議論を踏まえながら、実効性のある医師配置の仕組み を構築してまいります。

  2 若手医師のキャリア形成について


北林たけまさ


 次に、若手医師のキャリア形成についてお伺いします。

 県では、秋田大学と共同で設置した「あきた医師総合支援センター」において、若手医師が大学と地域の病院の勤務を交互に経験しながら、 医師としての研鑽を積む「地域循環型キャリア形成システム」の構築に向けて取り組んでいると伺っております。

 この仕組みは、若手医師のキャリア形成と、医師不足地域への医師配置の両立を目指すものとのことであり、私も大きな期待を寄せている ところであります。

 ところで、このシステムをうまく機能させていくためには、実際に大学と地域の病院を交互に経験する若手医師を、できる限り多く確保し ていくことが重要であると考えます。

 多くの若手医師がこのシステムの中で動くことによって、医師本人の希望や地域からの要望に応えられる余地も大きくなるのではないで しょうか。

 そこで提案ですが、秋田大学の地域枠を卒業した医師だけでなく、例えば自治医科大卒業医師も、このシステムの中に組み込むことはでき ないものでしょうか。

 現在、自治医科大学卒業医師は、医師不足地域の自治体病院に配置されており、北秋田市民病院でも四名が、まさに地域医療を確保して いくために奮闘されているところであります。

 こうした方々が、医師としての様々な経験を積み、意欲の向上を図っていくためにも、地域の中核病院等での勤務も早い段階で経験する ことが有効ではないかと考えます。是非とも前向きに検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

知事答弁


 自治医科大の卒業医師については、医師不足地域へ配置できる医師が少ない現状では、比較的小規模な自治体病院に即戦力として配置 せざるを得ませんが、こうした病院では、専門性を高めるために必要な症例数や、最新の医療技術に触れる機会の確保が難しいなどの課題 を抱えております。

 一方、若手医師の専門医志向が高まっている中で、希望する診療分野におけるキャリアの形成を積極的に支援することは、勤務に対す る意欲の維持・向上や、将来的な本県への定着を図っていく上でも重要であると考えております。

 このため、今後、増加していく地域枠等の修学資金貸与医師との配置調整等を図りながら、自治医科大卒業医師についても、医師不足地域 への適切な配置と希望するキャリア形成の両立が実現できるよう、関係機関と検討を進めてまいります。




  3 東北薬科大学による医学部開設について


北林たけまさ


 次に、東北薬科大学による医学部開設についてお伺いいたします。料の収集や製造が必要な為、地域に与える経済効果は風力など他の 自然エネルギーに比べて格段に大きく雇用も生まれます。

 震災復興や東北地方の深刻な医師不足への対応を目指して、現在、東北薬科大学において、来年四月の医学部開設に向けた準備作業が 進められておりますが、報道によりますと、入学者の半分以上を東北出身者が占めるように地域枠を設定し、修学資金制度を設けるなど 、東北地方への地域定着を強く意識した内容となっているようです。

 この医学部の新設が、本県の地域医療に対してもたらす効果や影響について、どのように捉えているのか、知事のお考えを伺います。



知事答弁


 開設される医学部の卒業生が医療の現場に出てくる時期が、既に医師が一定程度充足していると見込まれる平成36年度以降になることや、 本県の地域枠の入学生は5名程度となることから、医師不足解消への効果は限定的なものにとどまると考えております。

 一方で、大学では、東北各県においてネットワーク病院を指定し、そこで滞在型の地域医療実習を行うと伺っておりますので、医学生の 受入れが刺激となって、医療現場に好影響をもたらすことを期待しているところであります。

 また、今のところ、本県からの教員の採用予定はなく、地域医療への影響は現れておりませんが、今後も、医師の引き揚げなどが行われる ことのないよう、引き続き申し入れていきたいと考えております。




五 空き家対策について [知事]


北林たけまさ


 次に空き家対策について伺います。

 全国には820万戸の空き家があると言われ大きな社会問題となっております。県地域活力創造課のまとめによると、県内には10500戸余りの 空き家があり、大潟村と大館市を除く23市町村が空き家対策条例を制定し、また大館市においては環境保全条例において空き家対策を行って いるようです。

 そうした中、最近特に目につくようになったのが、積雪等により建物が損壊し保安上周囲に危険を与え、景観を著しく損なっている住宅です。 そうした住宅の多くは、持ち主が不在、または不明の場合が多く容易に解体が進まない状況にあります。

 国も空き家対策に乗り出し、昨年十一月に空き家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家特措法」という。)が制定され先月26日から 全面施行されました。

 空家特措法によって「特定空き家」に自治体が決めた場合は、固定資産税の減免措置の除外や、行政代執行の措置などが取れるようになった と伺っておりますが、こうした対応には建築や法律の専門知識も必要であり、市町村の多くは、具体的な対応には踏み込んでいけない状況に あるようです。今後県は市町村に対し、どのような指導助言を行っていくおつもりでしょうか。

 事の難しさとマンパワーが不足している市町村の状況を考えれば、県が主導して、協議機関を作り、場合によっては専門の機関を作る事も 検討されてはいかがでしょうか。県は市町村との協働や機能支援の推進を掲げておりますが、空き家対策にはまさにこうした取り組みが必要と考えます。

 また、空家特措法には第十五条に「国・都道府県は、市町村への補助金や地方交付税制度拡充等の財政上の措置を講ずる」とありますが、 具体の内容については示されていないようです。今後の見通しについてお分かりでしたらお聞かせください。

知事答弁


 これまで県では、市町村との連絡会議を開催し、空き家対策に関する取組事例を紹介するとともに、空き家関係法令の解釈や取扱いについて 弁護士から助言を受けるなど、情報の共有や対応スキルの向上に努めてまいりました。

 このたび、空家特措法が施行されたことから、今後、市町村において空き家対策が円滑に進められるよう、法律等の専門家を交えた市町村 相互の情報交換の場を提供するとともに、建築関係団体と連携して、特定空家等の判定に関する技術的な助言を行うなど、市町村の取組を サポートしてまいりたいと考えております。

 また、現時点では、国の具体的な財政措置が明らかにされておりませんが、特に所有者不明の特定空家等を代執行した際の経費が、 市町村の負担となることから、国に対し、十分な財政措置を講ずるよう、引き続き要望してまいります。質問要旨




  六 森吉山の国立公園編入について


北林たけまさ


 次に森吉山県立自然公園の国立公園編入について伺います。

 森吉山は県中央部の北寄りに位置し、県境をまたがない山としては県内最高峰の標高一、四五四メートル、古くから県北を代表する霊峰 として多くの学校の校歌にも歌われております。

 現在、北秋田市が県と市町村協働プログラムで「まるごと森吉山観光振興プロジェクト」に取り組んでいる最中でありますが、ゴンドラ を利用して気軽に秋の紅葉や冬の樹氷、春から夏にかけて多くの高山植物を楽しめるほか、奥森吉や奥阿仁には桃洞滝、安の滝、三階滝など全国に名を馳せる滝がいくつもあり、なめらかな曲線の岩壁と相まって国を代表する景観を有しております。生態系も多様で、成熟したブナ林や天然秋田杉の巨木の群生地など貴重な植生を有し、またクマゲラの住む森としても知られています。

 クマゲラは体長約四五センチ、日本最大のキツツキで、北海道と本州北部に生息しています。昭和九年に秋田県八幡平で初めて捕獲された 時には、北海道からの渡り鳥とみなされましたが、その後の調査で、北海道のクマゲラは、トドマツやエゾマツなどの針葉樹を主に営巣に 利用するのに対し、本州のものはブナを中心とした広葉樹を利用する事から、別の生態であることが分かりました。

 昭和四十年には国の天然記念物に指定されましたが、戦後に行われたブナの大量伐採により急速に生息数を減らし、最近では白神山地や 森吉山で、僅かながら生息が確認されるだけとなりました。

 環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧種に位置付けられております。クマゲラだけが大切と言うわけではありませんが、クマゲラは本州 のブナ林を象徴する種と言われ、本州からクマゲラが姿を消してしまうことは、かけがえのない財産を失うことであります。

 一方、森吉山県立自然公園と十和田八幡平国立公園は玉川温泉の西側で隣接しており、岩手山から八幡平、焼山と連続する火山帯の一部で あり、動植物の生態系から見ても同一の地域であるという事が言えます。

 森吉山の国立公園編入については、地元でもこれまで何度か話題に上ったことはありますが、具体の検討を行ったことは無いようです。 そこで私は先月、環境省の国立公園課を訪ね、編入の可能性についてお話を伺ってきました。

 環境省では、国立・国定公園を取り巻く自然環境、社会状況の変化に対応し、平成19九年から総点検事業を行い、全国18箇所を見直しの 対象として選定し、これらの箇所を中心に再編等の作業が進められています。

 その主なものには、平成十九年に日光国立公園から独立した尾瀬国立公園や、平成二十四年に霧島屋久国立公園が分離拡張して誕生した 霧島錦江湾国立公園及び屋久島国立公園、また平成25年には陸中海岸国立公園が県立自然公園などを編入して、三陸復興国立公園が誕生して おります。尚、この点検事業で森吉山は生態系の観点から鳥類の生息地として重要な地域に指定されております。

 十和田八幡平国立公園については現在、見直しの対象とはされておりませんが、関係者の理解と地元の要望などがあれば検討に加えること は可能とのお話でした。

 先ほど例を挙げた国立公園の新設や再編等の動きには、県や地元の意向も当然あったと思いますが、本県でも森吉山に限らず県立自然公園 について自然環境の保全や利用形態を調査し、必要に応じて見直しや再編、国立公園への編入などを検討するべきではないでしょうか。

 また十和田八幡平国立公園は昭和11年に十和田地区だけが十和田国立公園として指定され、その後、昭和31年に八幡平地域が追加され、 現在の十和田八幡平国立公園に改称されております。総面積は85,000ヘクタールを超え、全国の国立公園の中でも有数の規模を誇り、 北東北屈指の観光地ではありますが、十和田と八幡平は地理的にも相当離れております。

青森県や岩手県、また鹿角市や小坂町やとも連携し、利用の仕方や環境の保全、また的確な情報発信など様々な観点から検討をするべきでは ないでしょうか。

 森吉山県立自然公園の国立公園編入と十和田八幡平国立公園の見直しについて知事のお考えをお聞かせください。

知事答弁


 森吉山県立自然公園は、面積が約15,000ヘクタールと県立自然公園の中では最大規模を誇り、その景観は雄大で美しく、生態系も多様であり、 隣接する十和田八幡平国立公園に編入された場合は、知名度アップによる地域の活性化や、自然環境の保全に向けた意識の高揚といった効果が 期待されるところであります。

 県立自然公園の国立公園への編入や国立公園の見直しについては、最終的には環境省の中央環境審議会の審議を経て、国において決定される ことになっておりますが、その可能性を探っていく上では、地元の関係自治体の熱意が極めて重要となります。

 こうしたことから、森吉山県立自然公園の十和田八幡平国立公園への編入等の件については、まずは地元の北秋田市や仙北市、鹿角市や 小坂町と意見交換を行ってまいりたいと考えております。

 なお、県立自然公園については、自然環境の保全状況や利用形態等を踏まえますと、直ちに見直しや再編等を念頭においた全体的な調査 を行う状況にはないものと考えておりますが、引き続き、自然公園管理員による巡視活動や、利用者に対するアンケート等を通じて、 実態把握に努めてまいります。




  七 あきたリフレッシュ学園について


北林たけまさ


 次にあきたリフレッシュ学園事業について伺います。

 当事業は、学校や日常の生活に悩み、疲れた県内外の小中学生に、秋田の大自然の中で様々な体験活動を通して心と体のリフレッシュを図る 場と機会を提供することを目的に、平成20年から実施され、現在まで県内61名、県外12名、合計73名が利用しております。

 通常の学校生活になじめない子供達が、「体験活動」や「宿泊を通して生活のリズムを整える」などの学園生活により心身のリフレッシュ を図り、子供達の多くは高校や大学への進学、就職を果たしており、学校復帰率は七年間の平均で75パーセントを超えております。 不登校児童をサポートするフリースクールは全国に様々ありますが、公立のこうした学校は全国的にも珍しく、新聞やテレビで取り上げられ たことも何度かありました。

 しかしながら当事業は今年度で終了の予定と伺っており、利用者や関係者の間からは、事業の継続を望む声が強く上がっております。

 平成二十六年度事業評価結果一覧表を見ると、あきたリフレッシュ学園事業は必要性がB、有効性がA、効率性がCとなっておりますが、 このような事業においては、効率性を求めることは事業の性質上困難であり、また必要性については、現在利用している中2以下の生徒が 何名かいる事、また県内の不登校児童が増加傾向にある事から見ても、十分に高いと考えます。

 県は来年度大館地区に統合高校が開設されるのを機に、スペースイオが設置されることを廃止の理由に挙げているようですが、スペースイオ は不登校児童に学びの場を提供するものの、不登校に至る原因を根本的に改善する教育プログラムは行っておらず、当事業の受け皿には なり得ないものと思います。

 本県の小中学校の不登校児童生徒数は、全体児童数の減少にもかかわらず、平成25年度、655名と前年に比べ60人増加しており、また復帰率 も改善には至っておりません。あきたリフレッシュ学園がこれまで培った不登校児童に対する指導ノウハウを活かしながら、秋田の自然を 活かした教育プログラムを今後も実施していくことは、全国から高い評価を受けている本県の教育力を更に高める事になるのではないでしょうか。 教育長のお考えをお聞かせ下さい。

教育長答弁


 北林議員から御質問のありました、あきたリフレッシュ学園についてお答えします。

 あきたリフレッシュ学園は、平成十九年に行われた秋田県発展戦略会議の提言を受け、平成二十年度に、北秋田市に事業を委託し、 開園したものであります。試行的に三年間取り組んでまいりましたが、利用のニーズや不登校児童生徒の学校への復帰率が高いこ となどもあり、平成27年度まで事業を継続することとしておりました。

 その間、教育庁内に検討委員会を設け、来年度、大館地区に開設されるスペース・イオに、宿泊・体験活動を引き継げるかどうか、 学園の存続が可能かどうか、協議を進めてまいりましたところ、北秋田市から、学園を来年度より引き継ぐとの申し出がありました。

 これまで、県外6都県、県内14市町村から70名余りの児童生徒が学園を利用し、大自然の中での体験活動、宿泊での規則正しい生活など を通し、元気を取り戻しております。

 県教育委員会といたしましては、北秋田市へ学園の継続をお願いするとともに、秋田の教育のよさを全国に発信し、北秋田市以外の 児童生徒も受け入れることができるよう、支援のあり方について幅広く検討してまいります。




  八 警察犬の活用について


北林たけまさ


 次に警察犬の活用について伺います。

 警察犬は人間の数千倍と言われる鋭い嗅覚等の能力を高度に訓練し、足跡追及や臭気選別能力を警察などの捜査活動に利用するものであります。

 日本の警察犬には警察が直接飼育訓練する直轄警察犬と、一般人が飼育訓練している犬の中から、警察が実施する審査に合格し、非常勤の 警察犬として認められた嘱託警察犬の二種類がありますが、秋田県の場合は非常勤の嘱託警察犬のみであり、平成27年度は17頭が試験に合格し、 出動の要請に備え日夜訓練に励んでおります。

 しかしながら、ここ数年の出動状況を見ると多い年でも年間20件程度であり、一頭当たりの件数も一回程度に止まっております。警察犬の出動 は、犯罪性のある事案の捜査が主なため、犯罪件数の少ない本県では出番もおのずと少なくなります。

 一方、県内で事故や自殺の可能性のある行方不明者は年間300人程度に及び、そのうち平成26年の認知症の行方不明者は69人と、これまでで最も 多くなっております。

 高齢者等の行方不明事案については、警察犬の持つ足跡追及能力を活かし、早期の発見により生命の安全を確保したいところですが、警察犬の 出動については、国による出動謝金が事件出動に限られている事もあり、出動要請は一部の事例に限られております。

 全国的に見ると行方不明者の捜索活動に警察犬が出動し効果を上げている事例が多々あるようです。本県においては、高齢者等の行方不明の 事例は今後も増える事が予想されることからも、事件性の有無に関わらず、行方不明者の捜索に警察犬を活用することを検討されてはいかがで しょうか。警察本部長の見解をお尋ねします。

警察本部長答弁


 警察犬の活用についてお答えいたします。

 議員ご指摘のとおり、現在、本県において、嘱託警察犬の出動に際し、国費による出動謝金が支払われるのは、犯罪捜査活動に限られております。

 県警察といたしましては、高齢化の一層の進展に伴い、高齢者の行方不明事案等の増加が懸念される状況を踏まえ、行方不明者を早期に発見 保護するため、嘱託警察犬の積極的な活用を進める必要があるものと認識しております。

 行方不明者の捜索活動に対し、隣接する青森、山形両県を含む全国312府県において、嘱託警察犬を活用しているところであります。

 本県におきましでも、行方不明者の捜索活動に対する嘱託警察犬の活用について、検討してまいりたいと考えております。




北林たけまさ

以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございます。


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