平成二十九年第一回定例会 2月議会 代表質問





一 国際的な政治状況の変化について   [知事]


北林たけまさ


 自由民主党の北林丈正です。今回初めて代表質問の機会をいただいたことを大変光栄に思うと共に、早朝から傍聴においでいただいた皆様には厚く感謝を申し上げます。

 さて、佐竹知事が、昨年一年を表す漢字に「驚」を選んだように、昨年は国の内外で予測を超えた事柄が実にたくさん起こりました。

 中でもイギリスのEU離脱やアメリカ大統領選挙でのトランプ氏勝利は、事前のマスコミ報道からは予測しがたい結果であり、世界中に衝撃を与えました。これらの結果は、世界経済において、自由貿易を推進してきたイギリスとアメリカが、その流れを大きく変える動きともとることが出来、急速に進んだグローバル化と自由化が転換期を迎えたとの見方もあります。

 また背景にはグローバル化や自由貿易で経済が発展する一方で、恩恵に浴さない人々の不満や格差の拡大、またそれらを解決出来ない既存の政治に対する不信などがあるように思います。

 トランプ新大統領は、就任初日にTPPからの離脱を表明し、また就任演説では「貿易や雇用の保護は、大いなる繁栄と強さを米国にもたらす」と述べ保護主義を鮮明にしております。また「権力を首都ワシントンから国民に返還する」「口ばかりで行動しない政治家、不平ばかり言って自分では何もしない政治家はもう認めない」などと、従来の方針や政策を大きく転換することを宣言しております。

 今後経済面はもとより外交・安全保障面についても大きな変化が起こる事が予測されますが、日本も改めて、国家の主権や安全保障、貿易や移民などについて考え直す必要があるように思います。本県にとってもアメリカのTPP離脱、また中国やロシアなどとの外交関係の変化は、大変気になるところですが、知事は、こうした国際的な政治状況の変化と本県経済に対する影響をどのように捉えておられるでしょうか。ご所見をお聞かせください。



知事答弁


 トランプ大統領は、就任早々にTPPから離脱する大統領令に署名したほか、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明するとともに、我が国を含む各国の為替・金融施策に対する批判や、民間企業のグローバル戦略への介入を行っております。

 こうした行き過ぎた自国第一主義的な政治姿勢は、世界経済や国際情勢に大きな影響を与えることが危惧されているところであります。

 特に、資源が乏しく、人口減少等に伴う総需要の減少が見込まれる我が国においては、今後とも輸出の振興により経済を維持・発展させる必要があり、各国が相互に一定のルールのもと、農産物の自給率や国内雇用を確保しながら、貿易を振興していくことが重要であります。

 先般、国内最大級の自動車メーカーや航空機部品メーカーの幹部と意見交換を行ったところ、自動車メーカーでは、現在のアメリカの動きに困惑している状況でありましたが、航空機では、国際分業化の流れの中にあっても完成機がアメリカから出荷されていることから、大きな影響は受けないのではないかとの意見がありました。

 いずれにしても、中長期的には貿易構造の如何にかかわらず、技術競争に打ち勝つことが将来の発展につながるものであり、引き続き、自動車・航空機産業やその関連分野の状況を見据えながら、県内企業の技術向上に努めていかなければならないと考えております。

 なお、先日の安倍総理の訪米においては、トランプ大統領と極めて友好的なムードに終始し、ハードな話は出なかったようでありますが、今後、アメリカ政府として各分野における政策方針が具体化する中で、当然に個別具体的な事案での交渉に移っていくものと思われ、当面は自治体としても、その動向を注視していかなければならないものと考えております。



二 3期目に向けた意気込みについて   [知事]


北林たけまさ


 次に知事の三期目に向けた意気込みについて伺います。佐竹知事は昨年十二月議会において、今春行われる知事選挙に三選出馬の意向を示されました。二期目を間もなく終える佐竹県政の成果や課題については、これまで一般質問などで幾度も答弁されている通り、コメ依存脱却を目指して園芸メガ団地や畜産の振興や新エネルギー産業の育成を進め、また高速道路県内未着工区間の解消など、秋田の将来に向けて必要な施策を着実に実行されて来ました。

 一方、最大の課題である人口減少や出生数の低下には一向に歯止めの掛かる気配はありません。知事は今議会に人口減少に取り組む「新たな部」の設置も示されておりますが、これまでも人口問題に取り組む組織を県庁内に幾つも立ち上げながら、その成果は思うように表れておりません。組織の改編により、どのような効果が期待できるのか、また具体的にどのような施策を行おうとしているのでしょうか。

 昨年の県民意識調査においては、県の重点施策をまとめた六分野に対し、取り組みが十分だと感じる県民は平均すると一割に満たないようですが、どのような政策と意気込みを県民に示し、三期目に挑戦しようとされているのか、ご所見をお聞かせください。



知事答弁


 私は知事就任以来、時代の潮流や社会経済情勢を見極めつつ、県議会をはじめ、市町村、県民の皆様との「対話」を基本に十分な議論・検討を重ねながら、他県に先駆けた取組や従来の枠組みに捉われない大胆な施策を実行してまいりました。

 これにより、自動車や航空機、新エネルギーなどの成長分野を新たな産業の柱として育成してきたほか、米依存からの脱却に向けた取組の進展、観光・文化・スポーツが一体となった交流人口の拡大、さらには、全国トップレベルの子育て環境づくりや教育基盤の整備を図るなど、一定の成果を上げてきたものと考えております。

 一方で、少子化に歯止めをかけることや、女性・若者が定着できる職場づくりなどについては、道半ばであります。

 こうしたことから、本県の最重要課題である人口減少に真正面から向き合い、その最大の要因である「若者の県外流出の抑制及び県内への定着」「日本一の子育て環境づくり」を両輪として、重点的に取り組んでまいりたいと考えております。

 このため、若者の県内定着に結び付く雇用の場の確保に向けては、航空機、自動車等の主要部品の生産供給拠点の形成や、風力発電等の再生可能エネルギーの更なる導入拡大、中小企業へのよりきめ細かな支援を進めてまいります。

 また、県内企業の技術の高度化等による雇用環境の改善を背景として、多様な業種でのインターンシツプや全国最大規模の奨学金返還助成制度の活用、県内大学等の連携による県内就職率向上を目指すCOC十(シーオーシープラス)構想の推進などにより、高校生や大学生等の県内企業への就職を促進するとともに、ICTやデザインなど女性にとって真に魅力的な就業の場の創出や柔軟で多様な働き方ができる職場づくりを進めてまいります。

 農林業についても、日本一の枝豆に続き、しいたけ、ねぎ等の園芸作物の生産拡大を図ることなどにより、収益性の高い複合型生産構造への転換を加速させるとともに、木鉄ハイブリッドなど新たな木質部材の開発等により、木材需要と雇用の拡大を図ってまいりたいと考えております。

 加えて、多様なメディアを活用し、食や自然など「秋田暮らし」の魅力を情報発信するとともに、教育留学など全国トップレベルの教育・子育て環境を活かした移住・定住対策を強化してまいります。

 「日本一の子育て環境づくり」に向けては、全国トップレベルの保育料や医療費助成、子育て世帯のリフォームへの手厚い支援など、経済的負担の軽減を図るとともに、小中学校の三〇人程度学級を全学年で引き続き実施するほか、高校においては、統合校の整備や老朽化した校舎の改築等を推進するなど、教育環境の一層の充実に努めてまいります。

 こうした取組に加え、地域活性化に大きな効果のある交流人口の拡大に向けては、秋田犬など本県ならではの資源を活かした観光誘客を促進するほか、クルーズ船の寄港拡大に対応した港湾施設や、本県の文化の創造・発信拠点となる県・市連携文化施設の整備を着実に進めるとともに、地域LCCの可能性や大規模スポーツ施設の整備のあり方等についても検討してまいります。

 産業振興や生活環境の充実につながる交通基盤の整備については、国においても、新年度予算に将来の高速鉄道網のあり方の研究経費を計上したところであり、このタイミングをとらえ、奥羽・羽越両新幹線の実現に向けた県民運動を強力に展開するほか、高速道路のミッシングリンク解消や幹線道路網の整備を進めてまいりたいと考えております。

 本県の長年の課題である県民の健康づくりについては、「健康寿命日本一」を目指し、生活習慣病対策全般に関わる県民運動を展開するほか、医療従事者の確保・育成や、脳・循環器疾患の包括的な医療推進に向けた脳血管研究センターの増築等により、良質な医療提供体制を整備してまいります。

 これまでも、少子化対策局や人口問題対策課を設置するなどして人口減少の抑制に向けた様々な取組を行ってきており、第三子以降の出生割合の改善や移住者数の大幅な増加等の成果も現れているところでありますが、県民からは目に見える形で成果を出すことが求められております。

 新たに設置する「あきた未来創造部」においては、こうした取組の総合調整機能を強化するほか、移住・定住、少子化対策、若者の県内定着等の業務を一元的に行い、地域振興局を中心に市町村との連携を深めるとともに、これまでの取組の検証を行いながら、効果のあるものについては、より施策を特化させるなど、強力に施策を展開してまいります。

 「ふるさと秋田の元気を創造し、高質な田舎を実現する」という強い気概を県民の皆様と共有しながら、人口減少克服に向けて全力で取り組んでまいります。



三 本県人口の将来展望について   [知事]


北林たけまさ


 次に秋田県人口の将来展望について伺います。国立社会保障・人口問題研究所(以下社人研と言います)の行った「日本の地域別将来推計人口」で平成五十二年の本県人口は約七十万人とされ、改めて本県人口減少の深刻さが浮き彫りになりました。

 こうした数字を踏まえ、県は人口問題対策プロジェクトチームを立ち上げ、産業構造の変化と人口減少の関係などを細かく分析し「秋田の人口問題レポート」を取りまとめ、更に元気創造プラン等の施策を加味して「秋田県人口ビジョン」と題する本県人口の将来展望をまとめました。

 その中では合計特殊出生率を平成四十七年までに一・八三、平成六十二年までには二・〇七に上昇させ、人口動態の社会減についても徐々に収束し、平成五十二年以降は均衡する、との前提で、平成五十二年の人口を社人研の七十万人を六万人上回る七十六万人、更に二十年後の平成七十二年には社人研の推計を十四万三千人上回る六十一万一千人としております。

 また長期的には本県人口を約五十二万人と見込み、その後は安定的に推移する、と記されております。本県の将来について目指すべき目標を示すことは必要ですし、希望の持てるビジョンも大切です。しかし人口はあらゆる政策の基本となる数字であり、教育や福祉、また公共交通やスポーツ・文化施設など様々な社会資本整備にも影響を与えるものです。根拠の希薄な希望的な予測によって楽観視することは慎まなければならないと思います。

 本県の出産可能年齢の女性人口や年少人口の減少、現在年間六千人を割り込んでいる出生数の推移から見て、人口ビジョンが示す将来展望は楽観的過ぎると考えますが、いかがでしょうか。知事のご所見をお聞かせください。



 

知事答弁


 本県の将来人口については、国立社会保障・人口問題研究所による推計人口を基に、全国と本県の合計特殊出生率の差などを考慮の上、「あきた未来総合戦略」に基づく取組等により合計特殊出生率などが改善された場合、平成七十二年には社人研の推計を一四三、〇〇〇人上回るものと推計しております。

 我が国が人口減少局面を迎える中、本県の持続的な発展のためには、将来において一定規模の人口を維持していく必要があり、社人研の推計値を上回る目標を掲げ、その達成に向けて県民とともに全力で取り組んでいくことが重要であります。

 このため、総合戦略に基づき、女性や若者にとって真に魅力ある就業の場の創出等はもとより、移住・定住促進対策の強化を図るとともに、あきた結婚支援センターを中心に男女の出会いや結婚をより積極的にサポートするなど、人口減少に歯止めをかけるための施策を強力に展開してまいります。



四 あきた未来総合戦略について   [知事]


  1 産業振興による仕事づくりについて


北林たけまさ


 次にあきた未来総合戦略について伺います。本戦略の位置づけは、第二期ふるさと秋田元気創造プランと方向性を同じくしながらも、人口問題を切り口に政策分野を整理し、取り組みの充実強化を図るものとしており、県政の最重要課題に絞り組んだ戦略とも言うことが出来ます。

 推進期間は平成二十七年度から三十一年度の五年間であり、昨年九月には四つの基本目標ごとに進捗状況がまとめられました。本戦略は「人口減少の克服」と「秋田の創生」の実現に向けた施策・事業という位置づけであり、五年間で成果を出す為には、施策の検証を的確に行い、PDCAサイクルを素早く回し、既存の施策の見直しや新規の施策の追加などを弾力的に行っていく必要があると考えます。

 発表された進捗状況を見ると四つの政策分野ごとに定めた基本目標に基づき、数値目標の達成率や達成度がAからDの四段階評価で示され、その基本目標を構成する施策検証の結果と合わせ総合的に判定されています。 



 そこでまず基本目標の一つ目である、産業振興による仕事づくりについて伺います。産業基盤が弱く職場の少ないことが、人口減少の最大の要因であり、したがってこの目標の達成なしに人口ビジョンに示す将来展望の実現もないと考えます。まずここでの数値目標は雇用の創出数であり、二十七年度の目標二千二百三十五人に対し実績は二千十一人。達成率は九十%とあります。

 しかし内容をよく見ると、平成二十六年の実績を下回っており、また重要な指標である県内大学生の県内就職率については、目標の五十四%に対して四十七・二%にとどまっており、しかも現状より〇・四%低下しております。しかしながら総合評価の欄を見ると「概ね順調」とありますが、知事はこの評価をどのようにお考えでしょうか。

 数値目標の雇用創出数は成長分野や誘致企業、新たに会社を興す起業、農林業の新規就業者数などで構成されており、計画では平成三十一年度までの五年間で一万二千六百三十人の雇用創出を見込んでおりますが、達成に向けた見通しをどのようにお考えでしょうか。

 また本県において女性の働く場が少ないことが、女性の県外流出を増加させ、少子化の一因となっていることが言われておりますが、この項目にそうした要因を改善するための目標や対策は見当たりません。女性の仕事づくり、職場環境の改善等の項目も基本目標の一に加えるべきではないでしょうか。

 知事のご所見をお聞かせください。



知事答弁


 新たな雇用を創出するための産業振興は、人口減少対策の土台となるものであります。

 このため、輸送機や新エネルギーといった新たなリーデイング産業の育成、園芸メガ団地での産地形成等による複合型生産構造への転換、県外誘客の受入環境の整備等による交流人口の拡大など、本県の強みを活かした攻めの取組を進めてきているところであります。

 取組の成果が現れるまでに一定の期間を要するものや、社会経済情勢の変化等に左右され、県の施策のみではコントロールできないものもありますが、「仕事づくり」における施策のほとんどの指標の達成率が八割を超えていることなどから、「概ね順調」という評価に至ったものであります。

 また、数値目標である雇用創出数については、これまでの実績を踏まえつつ、今後、新たな視点の取組も加えながら、この流れを一層確かなものとし、目標を達成してまいりたいと考えております。

 女性の働く場の創出については、大規模情報サービス関連企業などの誘致等に取り組んでまいりましたが、今後、一般事務職については、AIの普及等により一層減少することが想定されることから、ICTやデザインなど、女性の高い感性が活かせる魅力ある就業の場の拡大に取り組んでまいります。

 併せて、近年の設備機器等の進歩により機械金属加工や建築土木などの分野においても女性の進出が著しく、先日県内に進出した航空機産業の一次サプライヤーでは、若い女性が高度なNC機器やロボット操作により重量物のエンジン部品を製作しているという実態も踏まえ、これまでの固定観念にとらわれることなく、人材育成も含めて女性の働く場の創出に向けた取組を、積極的に進めてまいりたいと考えております。

 また、仕事と子育てを両立できる環境づくりなど、職場環境の改善については、「一般事業主行動計画の策定件数」等の目標を設定しているところであり、その達成に向けて、取組をさらに加速してまいります。



  2 移住・定住対策について


北林たけまさ


 次に基本目標の二つ目である、移住定住対策について伺います。移住については目標の六十人を大幅に上回る百二十三人の実績があり、平成二十八年度も好調に推移しているようです。

 今後もこうした流れを加速させ、地域社会に活力を与える存在になって欲しいと思いますが、今後更に移住者を増やす為には、情報の発信から相談、受け入れ態勢の整備などを進めるため、支援センターと市町村、関係団体などが一体となった取り組みが必要ではないでしょうか。

 移住・定住に関する現在の状況と今後の進め方についてお聞かせください。

 またAターン就職者数については、目標の千四百人に対し、千八十人と大きく下回っております。地域別転入・転出者数を見ても、転出超過数は平成二十六年の四千四百四十五人から平成二十七年は二百五人増えて、四千六百五十人となっており、社会動態の減少数が増加する傾向は続いております。

 県は全国的に労働力不足が顕在化している中で、大都市圏における人材獲得競争が激化している影響と分析していますが、今後もそうした状況は強まるものと思います。Aターン就職者数を増加させ、人口の社会減少を低下させることは、本県の人口減少対策の中心的課題であり、先に述べた本県人口の将来展望においても、人口の社会減は徐々に収束し平成五十二年には均衡するとしております。

この問題の解決が容易でないことは承知しておりますが、それだけに、これまでの取り組みに加えて、新たな視点での取り組みや、産業界との連携が強く求められていると思いますが、知事のご所見をお聞かせください。

知事答弁


 県ではこれまで、他の地域との差別化を図った戦略的な情報発信や、移住者の受入体制の強化、移住体験・交流の推進、さらには移住後のフォロー体制の整備など、総合的な対策を講じてまいりました。

 その結果、今年度の移住者数は一月末現在で一一〇世帯、二三九人と昨年度の二倍近くに達し、目標を大幅に上回っている状況であり、しかも、その七割が三〇代以下の若い世代となっております。

 今後は、起業に取り組む移住希望者を、市町村や地域と連携しながら支援する「ドチャベン事業」を継続するほか、先輩移住者の視点で「秋田暮らし」の魅力を伝える事業に新たに取り組むなど、多様な主体との連携により、更なる移住の促進を図ってまいります。

 また、Aターン就職の促進については、首都圏での個別相談や就職面接会、帰省時期における相談会などを実施しているほか、Aターン登録者に対する求人情報の提供や、Aターンに関する情報誌の送付、個別面接の調整など、きめ細かな対応を行っております。

 今後は、県内の求人情報に加え、住居・教育・医療・福祉など、生活関連全般の情報を一体的に提供するほか、産業界等の意見を聞きながら、より効果的な取組を進め、一人でも多くのAターン就職の実現につなげてまいります。



  3 少子化対策につい


北林たけまさ


 次に基本目標の三つ目、少子化対策について伺います。数値目標は婚姻数と合計特殊出生率で、達成度はBとなっております。この目標は行政の立ち入ることが最も難しい分野でありますが、知事はこうしたことにもタブー視しないで取り組むとし、平成二十三年四月にあきた結婚支援センターを県内三カ所に開設しました。

 これまで一定の成果が上がっているとの報告は度々聞いておりますが、検証による「課題」には、自動退会により会員数が伸び悩んでいることや、結婚サポーターの活動による成婚報告者数が少ないことが挙げられております。

 平成二十七年の県全体の婚姻数は目標の四千二十件を一割ほど下回る三千六百十三件に留まっており、前年度と比較しても二百二十九件減少しています。数値目標の分析には、「進学・就職を契機として県外に転出し適齢期となる人口が大幅に減少した事が要因である」とありますが、婚姻数の減少率は適齢期の人口減少率を上回っております。

 結婚支援センターの設置が県全体の婚姻率の向上に繋がっているかは、数字を見る限り明らかではありません。結婚支援の在り方、効果的な方法等については、民間との連携も含め幅広く再検討する必要があるのではないでしょうか。

 また合計特殊出生率が0.04改善したことについては、大変喜ばしい事ではありますが、全国的な傾向でもあり、原因等について詳細な分析が必要と思いますがいかがでしょうか。



知事答弁


 県では、結婚支援において中心的な役割を担うあきた結婚支援センターの運営や、企業等が行う従業員の結婚に向けた意識の醸成を図るための取組を支援してきております。

 県、市町村及び民間団体が共同で設立した同センターにおいては、登録会員同士のマッチングだけでなく、民間の結婚支援団体が行う出会いイベントの開催支援や、独身従業員の出会いの機会づくりを応援する企業への情報提供、さらには地域で活動する結婚サポーターに対する支援など、多様な主体と連携しながら、幅広い事業を展開してきており、センターの累計成婚報告者数は今年の春には 1,000人を突破する見通しとなっております。

 今後は、会員同士のマッチング機会の拡大に向けたシステムの機能強化により、登録会員数の増加を図るとともに、行政や企業・関係団体が、より連携を強化しながら結婚支援の取組を進め、婚姻数の増加に結びつけてまいります。

 また、Aターン就職の促進については、首都圏での個別相談や就職面接会、帰省時期における相談会などを実施しているほか、Aターン登録者に対する求人情報の提供や、Aターンに関する情報誌の送付、個別面接の調整など、きめ細かな対応を行っております。

 また、本県の平成二十七年の合計特殊出生率の改善については、三〇歳以上の母親による出生数が増えたことによるものであり、今後とも官民一体となった脱少子化に向けた取組を通じて、こうした改善傾向を確かなものにしていきたいと考えております。




  4 新たな地域社会の形成について


北林たけまさ


 次に基本目標の四つ目、新たな地域社会の形成について伺います。人口の減少や高齢化に伴い、担い手が減少し、またバス路線の廃止など公共交通機関の減少により地域での暮らしが困難になっている地域が増えております。

 特に中山間地では近い将来消滅する可能性のある集落も多く、本戦略の基本目標にこの項目を掲げたことは、県としてもこの問題を重要視している表れと理解します。

しかしながら、目指す数値目標を見ると、「住んでいる地域が住みやすいと思っている人の割合」と「社会活動・地域活動に参加した人の割合」となっており、客観的な判断が難しい抽象的な目標値が設定されています。

 平成二十八年度もあきた未来づくり交付金事業の他、元気村や雪対策、移住定住支援、空き家対策事業など関係する多くの事業を実施しておりますが、こうした事業の結果も踏まえ、もう少し分かりやすい具体的な目標と判断基準を定めるべきではないでしょうか。



知事答弁


 人口減少社会にあっても、持続可能な新たな地域社会を構築していくため、女性や若者の活躍の促進のほか、多様な主体との協働の推進、高齢化時代に対応したまちづくりなど、各種施策に幅広く取り組んでおります。

 こうした多岐にわたる取組について、一般的な統計数値などにより、その成果をとらえることは困難であることから、住んでいる地域に対する県民の率直な思いである「住みやすさ」などに着目した数値目標を設定したものであります。

 そうした数値目標の達成はもとより、「自治体間の連携が実現した取組数」や「CCRCの導入によるまちづくり取組件数」など、個別の施策に係る評価指標の達成に努めながら、新たな地域社会の形成に向けて取り組んでまいります。

 なお、今後は、市町村が把握している集落や地域ごとの様々な情報を参考にしながら、そのニーズを踏まえた施策の評価のあり方について、研究してまいりたいと考えております。



  5 評価基準と目標設定について


北林たけまさ


 最後に「あきた未来総合戦略」全体を通しての評価基準と目標設定について伺います。

 開始から一年余りでの中間報告ですから、この進捗状況をもって、短絡的な評価をするつもりはありませんが、県は当戦略の進捗状況を全体として、「概ね順調」とする評価をされています。

四つの基本目標には、それぞれの目標を構成する施策があり、 検証の結果を「順調」「概ね順調」「やや遅れている」の三段階で評価していますが、全部で二十八ある施策のうち、「順調」と「概ね順調」と評価された施策は全体の九割以上にあたる二十六を占め、「やや遅れている」はわずか二つであります。

 達成度の判定基準が、目標値に対する実績値の百分率となっており、百%以上はA、八十%以上百%未満は四段階の上から二番目のBと評価されるため、現状維持、若しくは現状より低下していても「概ね順調」との項目も多々見られます。

 県民意識調査の数字と県の自己評価のズレは、新聞紙上等においても度々指摘されているところですが、こうした評価基準にも原因があるのではないでしょうか。

 あきた未来総合戦略の目指す、「人口流出に歯止めをかけ、東京圏から秋田への人の流れを作る」、「減り続ける出生数に歯止めをかける」などとする本県の課題は、これまで長年取り組んでも解決できない難問であります。 本気で解決するとするならば、年度ごとの目標値をクリアすることは当然必要ですし、さらに前倒しして達成する位の意気込みが必要ではないでしょうか。

 またそれぞれの施策や目標数値が最終的な目標とどう結びつくのかが分かりにくい点も否めません。施策を整理し、目標との整合性も再検討する必要があるのではないでしょうか。知事のご所見をお聞かせください。

知事答弁


 「あきた未来総合戦略」その施策においては、係るすう勢や現状を基本としつつ、県議会での議論などを踏まえながら、県民とともに全力で取り組むことにより、達成可能な努力目標的数値を設定しております。

 また、各施策の評価については、それを構成する取組に係る評価指標の達成率等を総合的に勘案して行っていることから、個々のレベルでは、現状維持又は現状より低下している場合であっても「概ね順調」と判断される場合もあります。

 いずれにしても、県の施策に対する評価と県民の受け止め方が乖離することは望ましいものではなく、「概ね順調」というような主観的な評価の表現には、私自身も若干違和感を感じており、今後は、施策の達成状況を、より的確かつ客観的に反映した表現の仕方についても検討してまいります。



五 農林業の振興について   [知事]


  1 戦略作物の更なる生産振興方策について


北林たけまさ


 次に、農業振興についてお伺いします。

 はじめに、戦略作物の更なる生産振興方策についてであります。我が国の農業は、人口減少社会の到来や経済のグローバル化の進展等を背景に大きな転換期を迎えております。

 平成二十七年の国勢調査によると、日本の総人口は一億二千七百九万人で、調査開始以来、初めて減少に転じており、今後も続くと想定される人口減少の中で、農産物の国内需要も減少していくことが確実であります。

 また、TPP協定については、発効が難しくなったとはいえ、今後、FTAやEPAによる経済連携の動きが強まることが見込まれていることから、農産物についても、海外との競争激化は避けられないものと考えております。

 このような中で、知事はこれまで「コメ依存からの脱却を掲げ、本県農業の長年の課題である複合型生産構造への転換に向けた取り組みを精力的に推進してまいりました。

 私も、コメの消費量が毎年減少し続ける中にあって、本県農業が持続的に発展していくためには、野菜や果樹、畜産など、収益性の高い戦略作物の生産拡大とブランド化を推進していくことが必要であると考えております。

 先般、農林水産省から、平成二十七年の農業産出額が公表され、それによると、本県の産出額は、一千六百十二億円で、前年よりも百三十九億円増加し、その伸び率は全国一位、伸び額も全国十位となっております。

 このことについて、県では、コメが八十一億円増加したことに加えて、これまで、重点的に生産拡大を進めてきた野菜や畜産等の戦略作物で五十八億円増加したことが、産出額を押し上げた大きな要因と分析しております。

 まさしく、園芸メガ団地の整備等により、二年連続で枝豆出荷量が日本一を獲得するとともに、ネギやキク類、リンドウやダリアの産地化が進んだほか、大規模畜産団地の整備等により、畜産の産出額も大幅に増加するなど、各種の施策が実を結んだ結果であり、佐竹県政の中でも最も大きな成果の一つと受け止めております。

 本県農業が成長産業として発展していくためには、軌道に乗ってきた複合型生産構造への転換に向けた勢いを緩めることなく、より確かなものとしていくことが何よりも重要であります。

 今後、野菜や果樹、花き、畜産といった戦略作物の生産拡大やブランド化をどのように進め、本県農業を更に発展させていこうとしているのか、知事の意気込みと具体的な戦略をお聞かせください。



知事答弁


 米の消費量が一貫して減り続ける中で、私は、このままでは本県農業が立ち行かなくなるとの思いから、「米依存からの脱却」を前面に掲げ、複合型生産構造への転換に向けた施策を大胆かつ集中的に実施してまいりました。

 これまでの取組の結果、二年連続で日本一を達成した枝豆をはじめ、系統販売額が二〇億円を突破したネギや、果樹・花きのオリジナル品種の生産拡大、秋田牛のブランド化などにより、平成二十七年の農業産出額は、全ての作目で増加し、前年からの伸び率が全国トップとなり、平成二十八年も、さらに増えるものと見込んでおります。

 また、構造改革を進めるシンボリックな取組として実施しているメガ団地や大規模畜産団地の先行事例が県内外で注目され、団地整備への機運が全県的に高まってきており、今後もこのような意欲的な取組を全力で後押しするとともに、新たな視点からの振興策を講じることで、複合型生産構造への転換をさらに加速させてまいりたいと考えております。

 まず野菜については、ネギやアスパラガス等の重点品目を中心に、オール秋田体制で生産販売対策を展開するとともに、特に枝豆は、出荷量日本一の地位を揺るぎないものとするため、新たなネーミングや商品デザインによるイメージ戦略を強化するほか、枝豆に続き日本一を目指す品目として、本県産が県外市場で好評を博しているしいたけの生産拡大を支援してまいります。

 果樹については、「秋田紅あかり」や「秋泉」など、オリジナル品種の生産拡大とブランド化を一層進めるとともに、「さくらんぼ」や「もも」、「シャインマスカット」など、収益性の高い樹種の導入を促進してまいります。

 過去最高の販売額となった花きについては、高品質で評価の高いキクの拡大を図るほか、飛躍的に売上げを伸ばしているリンドウや、昨年、全国コンテストで二回目の最優秀賞を獲得したNAMAHAGE(なまはげ)ダリアについては、国内市場をリードできるよう、オリジナル品種を売りとして産地化を強力に推し進めることにしております。

 畜産については、クラスター事業を活用しながら養豚・養鶏を含めて規模拡大を支援するとともに、特に肉用牛では、子牛価格の高騰に対応し、若い担い手による繁殖基盤の強化や繁殖・肥育一貫経営を推進するほか、米を給与した秋田牛や比内地鶏の優位性をアピールするなど、独自の視点で差別化を図りながらブランド化を進めてまいります。

 さらに、こうした生産対策と併せ、首都圏に加え、関西圏への販路拡大を目指し、プロモーションを強化するほか、大手物流企業との連携による鮮度保持輪送を活用しながら、海外展開に取り組むなど、県産農産物の販路開拓に努めてまいります。

 複合型生産構造の確立は、これまで様々な対策を講じても成し得なかった本県農業の積年の課題でありますが、私は、農家の方々の意欲的な取組により、全県域で着実に現れてきた成果に、確かな手応えを感じているところであります。

 今後とも、本県農業を魅力ある成長産業として発展させるため、これまでの流れを緩めることなく、一段と加速するよう、全力で取り組んでまいります。



  2 平成三十年以降のコメ作りのあり方について


北林たけまさ


 次に平成三十年以降のコメ作りのあり方についてであります。

 コメの販売を取り巻く情勢は、全国的に作柄が良かったこともあり、新潟産コシヒカリや山形産つや姫など、良食味ブランド米の卸間取引価格が下落傾向にある一方で、中食・外食向けなどの業務用米は、品薄状態で価格が堅調に推移するなど、需要動向は大きく変化してきております。

 このような中、平成三十年以降は、国のコメ政策の見直しにより、行政からの生産数量の配分が廃止され、農家やJA等が自主的に生産量を判断していくことになり、コメ作りは、より厳しい産地間競争の時代に突入することになります。

 本県農業が勝ち残っていくためには、これまでのように一律に枠をはめる政策を止め、他の作物と同様に、生産現場が、自らのアンテナを高くし、実需者ニーズを把握した上で、市場動向に柔軟に対応するコメ作り、まさに「需要に応じた生産」の実践が必要になってくると考えております。

 しかしながら、生産現場では、四十年以上にわたり、行政からの数量配分に基づいてコメ作りをしてきたこともあり、これまでと同様に行政からの配分を望む声や、今後、どのようなコメをどれだけ生産すればいいのか分からないといった不安があることに加え、生産調整が廃止され、好きなだけコメがつくれるようになるといった誤解も多く聞かれます。

 こうした状況を見ると、コメ作りの目指すべき姿、即ち「需要に応じた生産」の意味が、農家や一部の農業関係者に十分理解されておらず、進める側と生産現場との間に大きな乖離が生じていると考えざるを得ません。

 コメ政策の大転換に的確に対応するためには、実需に応じたコメ生産を誰がどのような形で進めるのかといった基本的な考え方を県として示した上で、オール秋田体制で進めていく必要があるのではないでしょうか。

 本県農業の基幹作物であるコメに関する政策の大転換を目前に、県として、どのように対応していこうとしているのか、知事のご所見と具体的な戦略をお聞かせください。



知事答弁


 半世紀近く続いた行政主導による生産目標の配分廃止に伴い、平成三十年以降は、農業者やJA等が、それぞれの経営判断や販売戦略に基づき、米を生産・販売することになります。

 その基本としては、売り先が決まっていない米の生産は、米価下落につながることから厳に慎む一方、市場動向や消費者ニーズをとらえながら、マーケットが求める米については、必要な量と品質で確実に供給するといった、まさに「需要に応じた生産」に取り組んでいくことであります。

 最近の米の消費動向を踏まえると、本県が、激化する産地間競争に打ち勝っていくためには、食味に優れ、高単価を狙う秋田米の新品種開発を急ぎながらも、年々需要が拡大している比較的値頃感のある業務用米の生産・販売に、より重きを置いて取り組んでいく必要があると考えております。

 県内では、既に三十年以降を見据えて、着々と準備を進めるJAや農業法人もありますが、このような販売を起点とした米づくりに、産地全体で取り組んでいくためには、実際に米を販売する集荷業者の役割が、以前にも増して重要になってまいります。

 特に主たる役割を担うJAには、実需者との結びつきを強化するとともに、農家に対して、生産販売計画を示しながら、需要に応じた生産を主体的に進めていただきたいと考えております。

 こうした観点を踏まえ、県では、今後の需要に応じた生産に取り組むための指針となる「新たな生産・販売戦略」を、本年八月を目処に策定することにしており、先般、県外の卸業者や外食等の実需者を交えた検討会において、議論を始めたところであります。

 県としましては、三十年以降の米づくりのあり方について、生産現場に状況を的確にとらえた認識を持っていただけるよう、農業再生協議会と連携し、周知活動を強化するとともに、JAや農業法人等が主体的に行う販路開拓の取組や、実需者からのオーダーに応える米づくりに対し新たな支援策を講じながら、米産県秋田の発展に努めてまいります。



 3 林業・木材産業の振興について


北林たけまさ


 次に、林業・木材産業の振興について伺います。

 秋田杉をはじめとする豊かな森林資源に恵まれた本県に置いては、林業・木材産業が地域の経済を支える重要な役割を果たしてきました。

 また、木材の利用は、間伐等の森林の適切な整備を促し、県土の保全や水源の涵養、地球温暖化の防止など、多くの恩恵を私たち県民にもたらしております。

 しかしながら、国産材は、木材輸入の自由化といった情勢に加え、外材に対抗できる国産材の供給体制の整備の遅れなどから、我が国の木材自給率は、平成十四年に十八・八%まで低迷し、本県にとっても大変厳しい状況が続きました。

 このため、本県では、全国最大級の木材総合加工産地づくりを重点施策に掲げ、国の基金事業等の積極的な活用のもと、川上から川下まで総合的な施策を展開してまいりました。

 具体的には、林内路網の開設や高性能林業機械の導入、林業大学校を核とした担い手の確保、木材加工施設の整備などにより、近年の素材生産量や秋田スギ製品の出荷量は大きく伸びております。

 素材生産量は、平成に入って最高となる約百二十四万立方メートルに達し、また、木材製品の出荷量も約百十一万立方メートルまで増加してきていることは、大きな成果の一つであると捉えております。

 また昨年、大規模な木質バイオマス発電施設が稼働したことで、これまで利用されることの少なかった曲がり材等の新たな需要も生まれ、伐り出した木材をフルに活用できる体制が整ってきました。

 しかしながら、将来に目を向けますと、人口減少に併せて国内の住宅建築戸数も減少していくことが予測されているなど、林業・木材産業を取り巻く情勢は、まだまだ厳しいものがあります。

 こうした中、本県のスギ人工林は本格的な利用期を迎え、その積極的な活用が一層求められる時代に入っております。

 林業・木材産業は、地域資源を活用して雇用を生み出すことができ、地方創生に大きく貢献できる産業であります。

 持続的な発展に向けて、これまでの取り組みを緩めることなく施策事業を展開していくことが必要でありますが、中でも、木材の需要を創造し、売り手を確保していくことが最も重要と考えております。

 本県では、「ウッドファースト」を合言葉に木材の優先利用に取り組んでいるほか、東京オリンピック・パラリンピック関連施設への県産材利用等を進めていますが、更なる需要創出に向け、こうした取り組みを一層強化していく必要があります。

 また、高品質な製品供給はもちろん、多様な木材需要に的確に対応できる生産基盤づくりも進めていかなければなりません。

 知事には、これまでも精力的に取り組んでおられますが、先人達が脈々と育ててきた豊富な森林資源を活かすためにも、林業・木材産業の更なる振興に取り組んでいただきたいと思います。今後の展開の方向や、木材の新たな需要創出についてのお考えをお聞かせください。



知事答弁


 県では、木材の優先利用に取り組むウッドファーストを県民運動として展開しながら、住宅や公共施設等での利用を促進するとともに、県産材需要に安定的に応えられるよう、森林整備加速化事業等を活用し、丸太の供給体制や木材加工流通施設の整備等に努めてまいりました。

 その結果、平成二十年度に比べて、素材生産量が約五割、木材製品の出荷量も約三割それぞれ増加するなど、本県が目指す木材総合加工産地づくりが着実に進展してきております。

 しかしながら、将来的には全国の新設住宅着工数が四割減少するといった試算もあり、今後は、住宅での利用にとどまらず、新たな市場の開拓等に取り組み、木材利用を一層促進してまいりたいと考えております。

 具体的には、中高層建築物に利用できるCLTや耐火部材、木と鉄を組み合わせたハイブリット部材など、新しい木質部材の開発に取り組むとともに、公共施設に加えて民間施設をターゲットに、こうした部材の活用に対して支援してまいります。

 また、住宅分野では、木材利用ポイント制度において、新たに梁(はり)や桁(けた)等での利用を促進するほか、内装材から構造材まで、高品質で多様な製品を供給できる本県の強みを活かし、首都圏や海外への販路開拓にも積極的に取り組むことにしております。

 こうした需要創出の取組を進めるとともに、引き続き、間伐等の施業の集約化や林内路網の整備、林業大学校を核とした人材育成など、生産体制の強化を図り、林業・木材産業が地方創生の一翼を担う産業として成長していけるよう、全力で取り組んでまいります。



 4 地理的表示保護制度について


北林たけまさ


 次に農林業の振興に関連して、地理的表示保護制度について伺います。

 この制度は、品質や社会的評価その他の確立した特性が産地と結びついている産品について、その名称を知的財産として保護するもので、国際的に広く認知されており、世界で百ヶ国を超える国で導入されています。

 日本においても、この制度を創設するため、平成二十六年六月に「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」が成立し、これにより地域ブランド産品として差別化が図られ、価格に反映されることや、不正使用に対して行政が取り締まりを行うことで生産者にとっては訴訟等の負担が無く、自分たちのブランドの保護が可能となりました。

 また昨年十二月に改正地理的表示(GI)法が施工され、これによりわが国と同等のGI制度を有する諸外国と相互保護が可能になり、日本の生産者は外国政府へ個別に申請しなくとも海外市場でブランド農産品のGIが保護され、輸出の拡大が見込まれます。

 現在、国内では、あおもりカシスや夕張メロン、十三湖産大和しじみなど二十四の産品が登録されているほか、これまで基準が曖昧だった黒毛和種の牛肉についても登録にあたっての基準が明確化されたことにより、今後申請に弾みが付くことが期待されています。

 登録された産品については、GIマークにより他の産品との差別化が図られ、また登録料についても、登録時の九万円以外の更新料等は不要とのことであり、本県の農林水産物もこの制度を利用することでブランド化や輸出の拡大などにつなげることが可能と考えます。本県特産のいぶりがっこや比内地鶏、ハタハタ寿司、また大館まげわっぱや樺細工などの工芸品も制度の活用により販路の拡大が見込めるように思いますが、いかがでしょうか。知事のご所見を伺います。



知事答弁


 経済のグローバル化が進展し、産地間競争が激化する中、農産物の販路拡大とブランド化を一層推進していくためには、プロモーション等による「攻め」の対策と併せ、地域特産物の名称を知的財産としてしっかりと保護する「守り」の取組が、ますます重要になってきております。

 このような中でスタートした本制度は、国が不正表示等を取り締まるとともに、同様の制度を有する輸出相手国との協定が整えば、その国においても名称が保護されるなど、従来の商標制度に比べて、ブランド化を図る上で、強い後ろ盾になるものと考えております。

 このため、県では、説明会の開催や産地・事業者等への個別訪問により、制度の周知を図るとともに、GI(ジーアイ)の登録を目指す団体に対し、国の機関と連携しながら、個別に助言・指導を行っているところであります。

 こうした取組により、現在、「大館とんぶり」や「松館(まつだて)しぼり大根」、「ひばり野オクラ」の三件が登録申請されているほか、いぶりがっこやしょっつる等においても、全県の生産者を包括する協議会の設立や品質基準づくりなど、申請に向けた準備が進められております。

 本県は、長年にわたって地域で育まれてきた伝統野菜や、全国に誇れる特産品を多く有することから、地理的表示保護制度を積極的に活用し、ブランド力を高めながら、国内外への販路拡大に努めてまいります。



 5 農業生産工程管理(GAP)について


北林たけまさ


 また関連して農産物の農業生産工程管理(GAP)について伺います。一月十九日付けの日本農業新聞の一面には、東京五輪で選手への食材提供が、国内でGAP取得が進んでいない為、国産品が大幅に不足する恐れがあるとの見出しが出ております。

 記事によると大会組織委員会では昨年十二月に基準案を示し、「グローバルGAP」「JGAPアドバンス」都道府県などの確認を得た農水省の「GAPの共通基盤に関するガイドライン」に準拠したGAP、を農産物の調達基準の要件としたようですが、日本国内でGAPを取得している産地は二%しかないとのことです。本県でのGAP取得の状況はいかがでしょうか。

 オリンピックは夏場の開催であり、本県の野菜や肉類も大いに売り込みを図るべきと思います。GAP取得が進んでいないとすれば今からでも認証の取得に動くべきではないでしょうか。またこうした国際的な認証を取得することはオリンピックに限らず、将来的な販路の拡大にも有効と考えますが、いかがでしょうか。取得の課題や見通しになどについて合わせてお聞かせください。



知事答弁


 東京オリンピック・パラリンピックの選手村等における農産物の調達基準では、民間の第三者認証制度である、グローバルGAP(ギャップ)やJGAP(ジェイギャップ)に加え、国のガイドラインに準拠した都道府県のGAPについても、県などの公的機関が生産者の取組を確認することで、食材として認められることになっております。

 本県において、JGAPの取得は六産地、五五農場に止(とど)まり、品目も米やジュンサイなどに限られておりますが、県版GAPについては、JAの生産部会を中心に、野菜や果樹など一〇〇を超える産地や品目で取り組まれております。

 東京オリンピック等の開催時期は、夏秋(かしゅう)野菜など県産農産物の最盛期に当たり、国内外の関係者に品質の高さなどをアピールする絶好の機会となることから、まずは、調達基準を満たすよう、県版GAPの確認体制を整備し、その取組を全県に拡大していきたいと考えております。

 また、欧米諸国等に向けた輸出の取引条件ともなっているグローバルGAPやJGAPについては、差し迫った必要性に乏しいことや、認証取得等に相応の費用を要することなどから、現在、取組が広がっていない状況にありますが、今後、東京オリンピック等を契機に、国内における市場取引のスタンダードになることも想定されます。

 このため、県としましては、農業団体等と連携し、GAPの取得を求める実需者の動向等を生産現場に情報提供し、意識啓発を図るとともに、農業法人やJA等における民間認証の取得についてサポートしながら、将来を見据えて認証産地の育成に力を入れてまいります。



六 人手不足について   [知事]


北林たけまさ


 次に人手不足に対する対応について伺います。秋田経済研究所が県内事業者を対象にアンケート調査を実施したところ、「経営上の問題点」について、これまで回答割合が高かったものは「販売量(受注量)の減少」でありましたが、近年は「人材不足」の割合が高まり、その割合は平成二十八年に逆転したとのことです。 労働力人口の減少により以前から予測されていたことではありますが、いよいよ現実のものとなった感があります。

 人材不足と回答した企業は、製造業で三十四・一%、非製造業では五十一・九%にも上ります。業種別にみると、「サービス業」が最も高く、雇用形態については正社員が八割を超え、不足している職種については「技術職」が最も多くなっています。

 新卒採用を定期的にしてこなかったため、熟練した職員が退職した後、後継者が確保できない状況にあるようですが、これは民間企業に限らず、県内の多くの職場に当てはまる事ではないでしょうか。

 これまで県の産業・労働政策は、企業を誘致しまた、新たな産業を興すことで働く場を確保することに主眼が置かれていたと認識しますが、これからは働く人の確保が重要です。県内企業が、雇用環境を改善し働く意欲を高める取り組みや、設備投資をして生産性を高める取り組みなどを積極的に後押しすべきではないでしょうか。

 働く場を創出する産業政策に加えて、雇用環境の改善や就職情報の発信、マッチングの推進など働く側に立った政策も強力に推進する必要があると考えますが、知事のご所見を伺います。



知事答弁


 企業が優秀な人材を確保するためには、収益力の向上に向け、付加価値生産性を高め、その成果を従業員に賃金や雇用環境改善などの形で還元できるような企業となり、その魅力を発信することが重要であると考えます。

 こうしたことから県では、県内企業における新たな事業展開や販路拡大、生産性向上などの取組に対し支援を行うとともに、処遇改善に向けた国の雇用関係助成金の積極的な活用を促し、働きやすい職場環境づくりを進めております。

 また、学生に対し、県内企業の魅力をアピールし、県内就職を促進するため、県の就活情報サイト「こっちゃけ」による情報発信をはじめ、合同就職面接会等によりマッチングを図っているほか、今年度から新たに、女子学生と県内で働く女性との交流会や、秋田大学との連携により、地元企業を学生に紹介する「秋田ものづくりオープンカレッジ」を開催しているところであります。

 さらに、学生が早い時期からの就業体験を通じて県内企業への理解を深められるよう、インターンシップ促進の取組を強化しており、関係機関・団体による促進協議会や企業向けセミナーの開催、受入企業を紹介する動画の就活情報サイトによる発信などに取り組んでいるほか、新たに、県内企業向けに、インターンシップ実施の効果やノウハウ等を掲載したガイドブックを作成することにしております。

 今後とも、労働団体や経済団体、教育機関などと密接な連携を図りながら、県内企業の人材確保を支援してまいります。



七 小中学校の統廃合について   [教育長]


北林たけまさ


 次に、小中学校の統廃合について教育長に伺います。

 文部科学省は平成二七年に「公立小中学校の適正規模・適正配置」の基準を六十年ぶりに見直し、公立小中学校について、望ましい規模を小学校は全学年でクラス替えできる「一学年二学級以上」、中学校は教科担任が学習指導できる「九学級以上」とし、 通学の距離や時間についても、小学校で四キロ以内、中学校で六キロ以内、スクールバス等で交通手段が確保できる場合は「概ね一時間以内」などとする手引きを策定しました。

 一方、県内の小中学校は、この手引きを待つまでもなく、少子化の影響で統廃合が進み、平成十三年度から二十八年度までの十三年間で百二十四校が減少しております、文部科学省の示す標準規模を下回る小規模校は、小学校で百三十七校、率にして六十八%、中学校で四十校、率にして三十五%に達しております。

また複式学級を採用する小学校も統廃合により一時期よりは減少したものの、現在二十五校に上っております。 本県においては、文科省の示す標準規模の学校は都市部の一部の学校に限られており、その他のほとんどは統合の検討を求められる小規模校に分類されることになります。

 文科省の手引き作成の背景には、このまま小規模校だけが増え、社会性を育む学校教育の効果が薄らぐことを危惧する声があるようですが、一方で小中学校は地域の核となる存在であり、また学校に通えない地域が出現した場合は、 憲法第二十六条に定める「すべての国民がひとしく教育を受ける権利」を害することにもなりかねません。

 地域の実情に即した柔軟な対応が求められると思いますが、文科省の示す学校統廃合の手引き案について教育長の見解をお聞かせください。

 面積が広く、中山間地の多い本県においては、このまま統廃合が進んだ場合、通学にスクールバスを使って、一時間以上要する地域も現れるており、統廃合が地域の存続をも左右する大きな問題になっています。

 文部省の手引案では、実際の判断については、市町村が地域の実情に応じたきめ細かな分析に基づいて行うべき、とありますが、地域にとっては極めて判断の難しいデリケートな問題であり、市町村も対応に苦慮しているのが実情です。

他県では、小規模校の短所を解消する為合同授業を行なったり、テレビ会議システムを使ったネットワーク授業を実施したり様々な工夫を凝らしているところもあるようですが、本県でも、地理的に統廃合の難しい小規模校に対して、その短所を解消する取り組みや、 子供の成長に応じた柔軟な授業方法を示すなど、小規模校が存続していくための方策を模索していく必要があるのではないでしょうか。

教育長のご所見をお聞かせください。



教育長答弁


 北林議員からご質問のありました、小中学校の統廃合についてお答えいたします。

 全国的に少子化が進む中、学校規模の適正化や小規模校における教育の充実は喫緊の課題であり、文部科学省が示した手引は、地域における学校のあり方について、各自治体の主体的な取組を総合的に支援する一環として策定されたものであるととらえております。

 学校の統廃合により、一定の学校規模を確保し、児童生徒が互いに切瑳琢磨する環境を構築することで、社会性や規範意識を醸成しようとする流れもありますが、一方で、小中学校には、地域コミュニティの中心的な役割もあり、小規模であっても各地域の活性化に寄与してきたところであります。

 学校規模の適正化は、児童生徒の教育条件をよりよくするという視点に立って検討することが重要であり、学校の統廃合を行うか、学校を存続させ、小規模校の特徴を活かした学校づくりを行うかについては、 保護者のみならず、地域住民の十分な理解と協力を得ながら、丁寧に議論を進めることにより、各自治体がそれぞれの実情に応じて判断していくことが望ましいと考えております。

 小規模校への対応といたしましては、複式学級における個別指導を充実させるための人的措置を行っているほか、各学校で実践している小中学生混合の植栽活動や近隣校との合同体験学習など、 社会性や規範意識を高める指導の事例を幅広く紹介しております。

 県教育委員会といたしましては、今後も、国の動向を踏まえながら、市町村教育委員会と連携し、充実した教育環境の整備に一層努めてまいります。




八 子どもの貧困対策について   [知事]


北林たけまさ


 次に子供の貧困対策について伺います。

 子供の貧困が社会的問題になっておりますが、内閣府の平成二十七年版白書を見ると、子供の相対的貧困率は十六・三%となっており、中でも大人が一人の世帯の貧困率は五四・六%と非常に高い水準となっています。

 県では平成二十七年度に「秋田県子どもの貧困対策推進計画」を策定し対策を進めていますが、昨年、ひとり親世帯の子育てに関するアンケート調査を実施し十二月議会にその調査結果が示されました。

 この調査は県内のひとり親世帯と十八歳以下の子供を養育している生活保護受給世帯を合わせた、一万一千六百九十七世帯を調査対象としており、実態の把握が難しいと言われる子供の貧困について、これまでに無い詳細な状況を知ることの出来る貴重なデータとなるものです。

 報告書を見ると、回答世帯のほぼ半数が貧困世帯に属しており、収入について「足りている」「大体足りている」とする世帯は、貧困世帯で九・三%、非貧困世帯でも二十五・九%にとどまっております。 また高校及び短大・大学までの教育などについても、与えられていない割合が、非貧困世帯に比べて貧困世帯がいずれも高くなっており、親の収入が子供の学歴に関係することが明らかになっております。

 また男女の性別では女性が八十八%を占めている中で、就労形態を見ると女性が男性に比べてパートの比率が著しく高いなど労働環境も不安定な事が読み取ることが出来ます。

 男女の賃金格差や女性に偏っている子育て負担が、子供の貧困に深く関わっている事も、このアンケートを見るとうかがい知ることが出来ますが、知事はこのアンケート結果をどのように読み取り、子供の貧困対策を進めていくおつもりかお聞かせください。



知事答弁


 アンケート結果からは、本県においても、ひとり親世帯の多くが低収入に苦しんでいる実態のほか、子どもの学習などに関する課題やニーズが浮き彫りになるとともに、貧困問題の広がりや深刻さが垣間見え、その対策を急ぐべきであると痛感いたしました。

 県では、奨学給付金や育英事業助成などの教育支援のほか、保育料助成や生活福祉資金などによる生活支援に取り組んでまいりましたが、貧国状態に長く置かれ、その影響を強く受ける子どもに対しては、なお一層の配慮が必要であると考えております。

 こうした中、国では、「子供の未来応援国民運動」の展開を図るとともに、給付型の奨学金制度の整備などを進めており、県としても、調査結果を踏まえ、新たに、高校進学に向けた学習支援や、教育資金の計画的な準備等に対して助言を行う家計相談支援に取り組むことにしております。 

 また、貧困の連鎖を断ち切るには、地域ネットワークの構築により、生活困窮世帯を早期に把握し、適切な支援につなげることが肝要であることから、福祉分野と教育分野をつなぐコーディネーターの養成や、各教育事務所等に配置しているスクールソーシヤルワーカーの増員により、地域や学校における相談支援体制の充実・強化に努めてまいります。

 子どもたちの未来は地域の未来であることを心に刻み、秋田に生まれた全ての子どもたちが夢と希望を持って成長していけるよう、広く県民に協力を呼びかけながら、市町村や関係機関との連携のもと、総合的な子どもの貧困対策に全力で取り組んでまいります。



北林たけまさ

以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。


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