平成30年第2回定例会 9月議会 一般質問





一 人口減少対策について  [知事]


  1 将来推計人口の下振れと社会減について

北林たけまさ


 自由民主党の北林丈正です。質問の機会をいただいたことを光栄に思い、また遠方から傍聴においでいただいた皆様には、深く感謝を申し上げます。

 まず、この夏の甲子園で準優勝に輝き県民栄誉賞を受賞された金足農業高校野球部に心からの感謝とお祝いを申し上げます。 自分を信じ仲間を信じ伝統の野球スタイルを貫いて戦い抜き、全国の強豪校を相手に決勝まで勝ち進む姿は、全国にカナノウブームを引き起こし、県民に限りない勇気と希望を与えてくれました。カナノウの活躍で、「秋田でもやればできる」と奮起し行動する若者が増えることを期待し、 また同時に大人は何が出来るのか、議会は何をすべきか、改めて考えさせられた次第です。人口減少が進む中においても、自然豊かな県土を守り、安心して暮らせる地域を実現したいという思いを込めて、質問をさせていただきます。県当局におかれましては、質問の趣旨をご理解いただき前向きな答弁をお願いいたします。

 初めに人口減少対策について伺います。今年三月に国立社会保障・人口問題研究所(以下社人研と言います)が発表した2040年の本県の推計人口は六十七万三千人で、五年前の平成二十五年に社人研が発表した推計を二万七千人も下回りました。

 これを受けて県は、六月議会に人口減少対策を加速化する「第三期ふるさと秋田元気創造プラン加速化パッケージ」を示し、急速に進行する高齢化や人手不足に対応する施策や今後の取り組みの方向性を示しました。本県の人口減少率は昨年度過去最高の1.4%を記録し、全国で最も高い減少率は今後も拡大する見通しです。 人口減少が避けられない中で、それを見越した対策を進めることは必要ですが、一方で何故これほど将来の人口推計が下振れをしたのか、またその割合が全国で最も大きくなったのかについても詳しく検証する必要があるのではないでしょうか。

 今年三月に発表の社人研推計が二十五年推計と比較して、本県のように下振れを起こしたのは十五の県であり、残りの三十二都道府県は上振れしています。総括質疑でもお話させていただきましたが、平成三十年と二十五年推計では、人口の移動率の仮定に違いがあり、そのことが「上振れ」や「下振れ」を起こした主な要因と思いますが、例えばお隣の岩手県を見ると二万人「上振れ」しており、また人口六十八万人の島根県は三万七千人「上振れ」しています。 本県とやや似たような環境にある両県が大きく上振れしたのはなぜでしょうか。

 本県でも第三期元気プランで人口減少対策の柱として社会減の半減を目標に掲げ、具体的な数値目標も示されましたが、他県の事例にヒントが隠されてはいないでしょうか。また、全国的に有効求人倍率が高まり人手不足が深刻化する中で、社会減の対策はこれまでとは違った視点での取り組みが必要と思います。社会減の半減に向けた見通しや課題、達成に向けた意気込みなどについて知事のご所見をお聞かせください。



知事答弁


 国立社会保障・人口問題研究所が発表している将来推計人口は、ベースとなる国勢調査の年齢別人口に、出生や社会動態等の直近の傾向を反映させたものであり、前回推計では社会増減が一定程度縮小していくと仮定したのに対し、 今回はその趨勢値(すうせいち)が継続するとの仮定に立って算定したものと伺っております。

 全国的には、近年の出生率の改善により、多くの都道府県で将来推計人口が上振れしたものと見込まれますが、本県では、進学や就職により10代後半から20代の若年層、とりわけ女性の社会減少率が前回の推計時点よりも大きくなっており、 このことが下振れの要因になったものと考えております。

 また、ご指摘のあった岩手県や島根県では、社会減の割合が前回推計に比べて縮小傾向にあり、若年人口の減少が抑えられておりますが、その背景には、若年層の移住・定住の促進や大手製造業での雇用拡大のほか、 外国人の積極的な受入れなど様々な要因があるものと推測されます。

 本県も、多様な施策を実施してきておりますが、目標とする社会減の半減は、息の長い取組を要するなど、その達成までの道のりは険しいものがあることから、これまでの取組を着実に進めるとともに、 保護者への県内就職情報の発信強化や年間を通じた秋田回帰キャンペーンによる県全体の機運醸成など、官民一体となった対策を積極的に講じてまいります。

今後は、労働力の確保が最大の課題であることから、まずは、秋田労働局と緊密な連携のもと、県内業界団体との連絡協議会を新たに設置し、テーマを絞り込みながら実効性のある具体策を取りまとめ、 人材の獲得競争に打ち勝てるような魅力ある雇用の場の創出や県内企業の採用力の向上、さらには雇用のマッチング機能の強化にも努めてまいります。

  2 新たな自治体行政について

北林たけまさ


 

 また、今回の社人研の推計で目に付くのは、市町村ごとの減少率の違いです。2015年と2045年を比較した人口の減少率は、最も少ない秋田市が28.5%に対し50%を超える市町村が過半数の13にも達し、60%を超える市町村も5つを数えます。

 人口の少ない市町村ほど減少率が高いのは全国的な傾向ですが、今後二十数年間でこれだけ急激な減少を迎えるとすれば、自治体の運営や住民サービスに対する影響は計り知れず、対策を急ぐ必要があると考えます。

総務省では、2040年頃の自治体の在り方を検討した「自治体戦略2040構想研究会」の二次報告を今年七月に公表しましたが、そこでは人口減少により2040年には今の半数の公務員で行政を支える必要があるとして、「スマート自治体への転換」や 「公共私による暮らしの維持」「圏域マネジメントと県・市町村の二層化の柔軟化」などを提唱しています。

 具体的には、人口規模の小さな市町村は行政のフルセット主義から脱却し、圏域単位での行政をスタンダードにすることや、核となる都市が無い地域では県が市町村の補完・支援に本格的に乗り出すことが必要だ、などとする提言は、本県こそ真っ先に取り組むべき対策と考えます。 国による法整備も必要と思いますが、これほど急激に人口が減少する市町村を数多く抱える本県は、国に先んじて新たな自治体行政へ転換を模索し提言していくべきではないでしょうか。長く地方行政に携わってきた佐竹知事のご所見を伺います。





知事答弁


 人口減少が急速に進む本県においては、これまでも他の自治体に先駆けて、機能合体などの新たな自治体行政の構築に取り組んできましたが、今年三月の社人研の人口推計を踏まえれば、 将来的には、組織や財源なども含め、自治体のあり方が大きく変わらざるを得ないのではないかと考えております。

 こうした中で、将来における市町村の行政サービスの維持について、以前にも増して強い危機感を抱いており、今後は、産業や観光の振興を含む広範囲な分野で、 県と市町村あるいは市町村同士の連携を拡大するほか、市町村の区域を越えて行政サービスを提供する仕組づくりを進めるなど、柔軟かつ新たな発想で、これまで以上に連携の取組を強化してまいります。

 この七月から始まった地方制度調査会の検討テーマのひとつは「圏域における地方公共団体の協力関係」であり、地方行政体制のあり方について、法整備などを伴う抜本的な見直しを含めた議論が行われるものと認識しております。

 県としましては、こうした国の動向を注視しながら、県独自の自治体間連携の取組が、国の制度改革に反映されるよう積極的に提言してまいりたいと考えております。

 なお、本県の下水道処理に係る取組などは、「秋田モデル」として、先進的事例と高く評価されており、こうした取組の成果を、今後予定されている地方制度調査会のヒアリングにおいて、私から報告したいと考えております。



二 県土の保全について   [知事]


  1 耕作放棄地について


北林たけまさ



 次に県土の保全についていくつかお尋ねします。急激な人口の減少は県民生活に様々な不安を引き起こしていますが、中でも心配なのは、県土の保全が将来にわたって適切に行われるかについてであります。 農林業の衰退や公共事業予算の削減などもあり、最近手入れの行き届かない農地や山林、河川などが目立ってきたように思います。

 そこでまず、農地の耕作放棄地について伺います。農林水産省のデータによると、二〇一七年の耕作放棄地面積は二〇一二年より四万三千ha、率にして13%増加し三十八万六千haとなりました。 これはほぼ埼玉県の面積に相当します。本県においては農地中間管理機構による農地の集積も進んでおり、現在のところ耕作放棄地はあまり目立っていませんが、条件の悪い中山間地の水田については、 借り手が集まらず農地の集積・集約化が進まなくなる可能性も指摘されております。こうした中、今年度新たに創設された「農地中間管理機構関連農地整備事業」は農家負担が無く、応募する地域も多いようです。 中山間地の営農継続と耕作放棄地対策の切り札として期待が集まっていますが、当事業の進捗状況と今後の見通しについてお聞かせください。

 一方、人口の減少による需要の低下、農家の高齢化などを考えると農地の集積だけでは限界があるようにも思います。条件の厳しい中山間地については、採草地や林地への転換など土地利用の形態を変えることも検討する必要があるのではないでしょうか。 山梨県北杜市ではNPO法人が放棄された農地を借り受け、企業の社会貢献や人材育成に活用する取り組みを平成十六年から続け、山間地の耕作放棄地を復元させております。本県においても様々な団体を巻き込み、 知恵を結集して耕作放棄地の解消に取り組む必要があると考えます。本県の耕作放棄地の現状と今後の対応についてお聞かせください。



知事答弁




 二〇一五年農林業センサスによると、県内の耕作放棄地は、9530ヘクタールと、近年、増加傾向にあり、特に中山間地域で多くなっております。 県では、農地は食料生産の基盤として有効に利用することを基本に、「日本型直接支払制度」を活用し、県内農地の約七割で、地域住民も巻き込んだ保全活動を支援するなど、耕作放棄地の発生防止に努めているところであります。

 また、国では、中山間地域においても、収益性の高い農業を展開できるよう、小規模でも農家負担なしで実施できる新たな基盤整備事業を創設したところであり、耕作放棄地の抑制にも有効であることから、 本県でも積極的に活用することにし、本年度は、5地区で実施する予定であります。

 本事業は、農家の関心が高く、現在、県内30地区から要望が挙がってきておりますが、クリアすべき要件も多いことから、今後は、地元の合意が図られ、高い事業効果が期待できる地区から順次実施してまいります。

 また、耕作放棄状態となった農地については、農業法人やNPO法人等が国の事業を活用し、ナタネやソバを栽培するなど、これまでに約1100ヘクタールの農地の再生に取り組んできたところであり、 今後とも、こうした多様な主体による取組を支援してまいります。




  2 山林の保全について


北林たけまさ


 関連して山林の保全について伺います。本県の木材素材生産量はここ数年大きく増加をしておりますが、伐採後の様子を見ると作業用道路で削られた山肌が露出し、再造林も二割程度しか行われていないのが現状のようです。

 民有林の所有者は、山林を所有することを負担と感じ相続を放棄したり、未登記のままにする例も増えているようです。森林経営に無関心な所有者や所有者不明の森林は今後大幅に増えるものと予想されますが、こうした事態を県はどのように捉えているでしょうか。 森林資源を適切に管理していくためには、農地中間管理機構のように、公的機関が森林所有者から委託を受け、能力のある林業経営者に森林管理を委託するような仕組みも必要と思います。 国においては、森林環境譲与税の創設も決まり、新たな森林管理システムの検討もされているようですが、その内容と課題等についてお聞かせください。



知事答弁


 本県における民有の人工林二四万ヘクタールのうち10万ヘクタール程度は、所有者の高齢化や不在村化の進行により、十分な管理がなされずに放置されており、今後、こうした森林の更なる拡大が懸念されております。

 平成三十一年度から導入される新たな森林管理システムは、このような森林で間伐等の管理を適切に行う制度であり、具体的には、所有者が自ら経営できないと意思表示をした森林は、市町村が委託を受け、 そのうち採算が見込まれるものについては、意欲と能力のある林業経営体に再委託し、それ以外は市町村が自ら管理するものであります。

 このように、本制度は、市町村が主体となって進めるものでありますが、所有者への森林管理に対する意向調査や管理計画の策定など、果たすべき役割が増大する一方で、市町村の実情を見ると林業の専門職員が不足し、 事業実施に対する不安が強いことから、先般の秋田県・市町村協働政策会議において、連携して進めることを確認したところであります。

 このため、県では、増加する業務に適切に対応できるよう、今年の六月に市町村等との連絡会を設置したところであり、今後は、専門知識を有する外部アドバイザーの紹介や、経営管理を受託する林業経営体の育成など、 様々な課題に個別に対応し、来年度から全ての市町村が円滑に事業を実施できるよう支援してまいります。




  3 河川管理とダムの堆砂(たいさ・たいしゃ)について


北林たけまさ


 関連して河川の管理についてお尋ねします。昨年七月、八月の記録的豪雨に続いて今年五月十八日には田植え直前の水田を豪雨が襲うなど、豪雨による河川の氾濫、洪水被害は後を絶ちません。現在、雄物川など国の支援を受けた災害復旧事業が進められていますが、 一方県の管理する河川を日頃見ていて感じるのは、川底に土砂が溜り草木の生い茂る河川が増えている事です。こうした状況が河川の流水能力を低下させ、氾濫の原因となってはいないでしょうか。

 県の管理する河川は、一級が二百九十一河川、二級が五十一河川あり流路延長は二千八百七十五キロに及びます。河川の整備については、河川整備方針に沿った計画が策定され事業が進められるようですが、整備計画が策定されるのは、大きな災害の起きた河川に限られるようで、その他の河川は整備計画の策定まで至らないのが現状のようです。 災害が起きてから対応するのではなく、災害が起きないような日頃からの維持管理が大切と思いますが、県の河川管理に対する基本的な考えと課題等についてお聞かせください。

 またダムについては、構造上土砂の堆積は避けられず年々貯水能力が減少していきます。国土交通省では、全国のダム堆砂状況を公表していますが、そのスピードは予想より早く、例えば平成二十三年に完成したばかりの森吉山ダムの堆砂量を見ても、約90万立方メートルと堆砂容量の一割程にも達しています。 県管理のダムの堆砂の状況と今後の対応方針についてもお聞かせください。



知事答弁


 県では、河川の正常な機能を維持し、洪水による災害の発生を防止するため、点検などの管理業務を行っており、中でも、州ざらいや伐木は、河川の流下能力を確保する上で効果的であり、平成二十八年度から予算を拡充し、 人家への影響などの優先度を考慮しながら計画的に実施しております。

 しかしながら、県管理河川は、全体で342河川に上っており、県単独による財源の確保が困難であることから、国に対して「河道内の堆積土砂撤去」かどうへの財政支援措置を講じるよう、要望しているところであり、 今年七月の全国知事会においても、西日本豪雨を踏まえ、同様の措置についての緊急提言を行っております。

 また、ダムについては、その設計に当たり、整備後100年間で堆積する土砂量を見込んだ上で、必要な貯水容量を確保することにしており、仮に堆砂容量を超えるような場合は、土砂の撤去などの対策を検討する必要があります。

 現在、県が管理する15ダムのうち、素波里ダムを除く14ダムについては、建設時からの経過年数に対し、概ね計画どおりの堆砂量となっており、直ちに対策が必要な状況にはありませんが、定期的な測量等により、堆砂量を確認してまいります。 素波里ダムについては、経過年数47年に対する堆砂率が93パーセントと計画を上回る早さで進んでいることから、必要な対策の検討を進めているところであります。

 今後も、州ざらいや伐木などを効果的に実施し、河川の流下能力を確保するとともに、ダムの洪水調節機能が確実に発揮されるよう、適切な管理に努めてまいります。



三 内水面漁業の振興について [知事]


  1 地域資源としての活用について


北林たけまさ



 次に内水面漁業について伺います。レジャー白書によると、日本では毎年およそ700万人から800万人が釣りをしており、スポーツレジャーの中で野球やサッカー、スキーなどを上回る9位にランクされております。 この数字には海の釣り人も含まれており、内水面に限った統計データは少ないようですが、平成二十七年に釣りをした全国1千人を対象にアンケートを行った結果によると、内水面の釣り人は全体の約41%、三百三十六万人となっています。

 また、レジャー白書を見ると、「釣りの年間総支出額は約4500億円であり、ゴルフに次いで2位であるが、参加率は年々減少しており、今後効果的な遊漁振興策を検討するためには、魚種別や釣り方別など具体的なデータをもとに、 釣りをしたくなるような方策を検討するのが良いと考えられる。」との記述もありました。

 ご承知のように本県にはアユやサクラマスの釣れる河川が数多く存在し、私の地元の阿仁川も全国的に有名な友釣り河川として知られ、毎年多くの釣り人が訪れています。 また、渓流釣りに関しても、県内にはその醍醐味を味わえるポイントが多数存在し、県内外から多くの釣り人が訪れています。

 このように本県の貴重な資源である内水面漁業を観光や経済活性化のツールとして捉え、積極的に活用すべきと考えますが、知事のご所見を伺います。



知事答弁


 本県には、アユやサクラマスが釣れる河川が多く、中でも、「尺アユ」の阿仁川や、「殿さまあゆ」の桧木内川、サクラマスの遡上が多い米代川などは人気が高く、県内外から多数の釣り客が訪れております。

 特に、七月一日から解禁されるアユ釣りについては、夏場の観光シーズンと重なることから、それぞれの地域において観光や地域活性化のツールとして、様々なイベントに活用されております。

 県としましては、養殖業者や漁協等と連携しながら、稚魚の早期放流により、大型のアユが釣れる環境づくりを進めるほか、アユの遡上状況や釣果予測など、釣り人が求める情報を積極的に発信して釣り場としての魅力を高め、 誘客促進につなげてまいります。




  2 漁協の経営実態等について


北林たけまさ


一方、内水面漁業には幾つもの課題があるようです。多くの国と異なり、日本では水産資源や漁場の直接的な管理者は国や都道府県ではなく地域の漁協であります。 そのため漁協が健全な経営と漁業の振興を図る必要がありますが、現実には財政の悪化、組合員の高齢化、減少などに直面しているところが多くなっております。

また、ご承知のように日本の内水面の組合には義務放流と言われる、増殖の義務が課せられており、漁協は入漁料などの収入を財源として増殖事業を行います。 増殖事業の主なものは稚魚の放流ですが、放流事業の採算性は、魚種による違いはありますが、主力であるアユについてはあまり高くないようです。知事はこうした現状をどのように把握し対策を考えておられるでしょうか。



知事答弁


 内水面の魚種については、漁業法に基づく増殖義務として、漁協が稚魚放流を行っておりますが、近年、夏場の天候不順等により、収入源である遊漁料収入が十分に確保できないことから、放流数は減少傾向にあります。

 こうした状況に対応し、遊漁者の増加を図るためには、大型アユの増殖等により、河川の魅力を高めるとともに、稚魚放流に頼らない低コストな増殖手法を導入する必要があります。

 近年、国の研究機関が中心となって、ふ化直前の発眼卵の放流や人工産卵場の造成など、稚魚放流よりも、低コストで増殖効果が高い手法が開発されていることから、こうした技術の導入を促進し、漁協経営の改善につなげてまいります。




  3 資源回復の取組について


北林たけまさ


 関連して県内の内水面資源の回復についてお尋ねします。

 アユの漁獲量は本県だけでなく全国的に減少しています。解禁日の早まったサクラマスも生息数が減少し魚体も小型化しているようです。減っているのはアユや川マスだけではありません。 子供の頃には良く採れたカジカやヤツメなども最近はめっきり少なくなりました。原因は様々あると思いますが、やはり河川の環境変化が大きいのではないでしょうか。魚の遡上を妨げる堰堤やダムが出来、川底には土砂や泥が堆積するなど生き物にとって、川の環境は以前に比べて厳しくなっています。 河川の管理は用水としての利用、また近年多発する洪水被害を予防する治水などを主な目的にされていますが、同時に貴重な生き物を育む生態系のひとつであることを忘れてはならないと思います。 内水面資源の回復にはこれまでも様々な取り組みがなされたと思います。堰堤などへの魚道の設置や人口産卵場の造成なども行われたようですが、効果の程はいかがでしょうか。

 先程義務放流についてもお尋ねしましたが、河川の環境が生き物にとって住みよいものにならなければ、放流しても効果は上がりません。河川の管理には、治山関係者、農業関係者、漁協など多くの団体が関わっており調整には多大な労力を要すると思いますが、 今一度、生き物の住み家としての河川も大切にし、資源の回復に努めるべきと考えますが、知事のご所見をお聞かせください。

 また、近年カワウの被害が深刻化し、調査の結果、北欧の杜公園などで営巣地が発見されました。捕獲するためには、保護管理計画を立てる必要があるとお聞きしましたが、計画の進捗状況をお聞かせください。





知事答弁


 内水面の重要な魚種であるアユやサクラマスは、ふ化後、海にくだり、再び川をのぼって産卵することから、遡上を阻害する河川工作物や上流域から運ばれた土砂等が、増殖に悪影響を及ぼしていることも事実であります。

 県では、これまで、県内八二か所の工作物に魚道を整備するとともに、漁協で設置する簡易魚道についても支援しており、こうした河川では、アユやサクラマスの遡上が増加傾向にあります。

 また、人工産卵場については、河床を直径3メートル程度のすり鉢状に掘削し、礫(れき)を敷き並べることで、一定の産卵効果があることを確認しております。 県としましては、引き続き、河川環境の保全に配慮した計画に基づき、良好な瀬や淵などを保全しながら、漁協等と連携し、河川における産卵環境等の整備に努めてまいります。

 また、カワウについては、平成二十年頃から生息が確認され、内水面の重要魚種であるアユなどの食害が明らかになってきたことから、平成二十八年度以降、ドローンを活用したモニタリング調査を実施し、 北秋田市など県内四か所で繁殖地を確認したところであります。

 このうち、アユ等の被害が懸念されるところでは、内水面漁業組合連合会が、空砲等による追い払いやエアライフル等による捕獲を行っており、本年度は、既に200羽以上を捕獲したところであります。

 今後とも、効果的な駆除方法を研究している国の機関とも連携し、被害軽減に向けた対策を強化してまいります。



四 縄文文化について     [教育長]


北林たけまさ


 次に縄文文化についてお尋ねします。

 さる7月19日、本県の伊勢堂岱遺跡、大湯環状列石の2ヶ所を含む北海道・北東北の縄文遺跡群が世界文化遺産の国内推薦候補に決定しました。6度目の挑戦での決定に関係者の喜びもひとしおです。 私も県議会縄文議連幹事長として、今回候補に選ばれなければどう責任を取るべきか悩んでおりましたので、正直ほっとしたのが実感であります。県文化財保護室、北秋田市、鹿角市など関係の皆様のご尽力に感謝申し上げます。

 今後は二〇二〇年の正式登録を目指して行くことになりますが、課題をどのように捉えているでしょうか。

 ご承知のように縄文文化は、本格的な農耕と牧畜を選択することなく、狩猟・採集・漁労を生業の基盤として定住を達成し、協調的な社会を作り上げ、一万年以上もの長期間継続した、人類史上極めて貴重な文化です。

 ところが、従前の考古学では、農耕による食糧生産が文明発生の前提とされていたため、農業を持たない縄文文化は、他の新石器文化とは区別され、人類の文明史から除外されていたようです。 最近の考古学の進展により、縄文文化の先進性や革新性が明らかとなり、その価値が認められ世界遺産登録へと道が開けてきたことは、極めて意義深い事です。 地球環境問題が人類最大の問題と言われる今日、自然の秩序の一員として生きた縄文文化は、世界から注目を集めていくのではないでしょうか。

 また、縄文文化の革新性に土器の発明があります。土器の発明地は世界に何カ所かありますが、その中でも縄文土器は断然古く一万年をはるかに超えております。土器の発明により煮炊きが出来るようになり、生活は大きく変わりました。 更に造形的な観点からも縄文土器には他に見られない特徴があります。縄文土器に芸術的価値を見出したのは岡本太郎氏です。 1951年に偶然、縄文土器を目にした彼は電撃的な衝撃を受け、その時の思いを「私の血の中に力がふき起こるのを覚えた」「常々芸術の本質として超自然的激越を主張する私でさえ、思わず叫びたくなる凄みである」などと書いています。 このような容器としての機能を度外視した火焔型土器、表情豊かな土偶、石を円形に並べた環状列石などは縄文人の思想や世界観を伺わせ、現代人の興味を掻き立ててやみません。

 このように縄文文化は限りない価値と魅力を持っていますが、他の世界遺産に見られるような迫力や荘厳さに欠けるため、見ただけではその価値を理解するのは難しい面もあります。 そこで今回、世界遺産登録を目指す遺跡以外にも県内には沢山の縄文遺跡があると思いますが、それらを含めて、県民に広く縄文文化の価値を伝え、世界遺産登録への機運を盛り上げるべきではないでしょうか。 県内の縄文遺跡の分布や保全状態についてもお知らせください。

 また、観光面での活用を考えた場合、4道県17遺跡の中で、本県の二つの遺跡をどう位置付けPRするかは重要な点です。伊勢堂岱と大湯は車で1時間程度であり、遺跡群の中核である青森の三内丸山や八戸の是川遺跡とも高速道路で結ばれています。 こうした地の利を活かした連携を積極的に進める必要があると思いますがいかがでしょうか。教育長のご所見を伺います。



教育長答弁


 北林議員からご質問のありました、縄文文化についてお答えいたします。

 本県の伊勢堂岱遺跡、大湯環状列石を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」につきましては、県議会の皆様及び関係者の方々のお力添えにより、国の文化審議会から世界文化遺産の国内推薦候補として決定をいただきました。改めて御礼を申し上げます。

 今後の課題といたしましては、ユネスコに提出する英文の推薦書について、説得力があり、精度の高いものとするよう文化庁から指導がありましたので、現在は英文表現を重点的に検討するなど、必要な作業を鋭意進めているところであります。 また、イコモスの調査やユネスコの審査に向けて、国内だけでなく、海外での認知度向上と理解促進を図る取組にも力を入れてまいります。

 次に、県内の縄文遺跡についてでありますが、現在、県内全域、約2500か所に分布しており、うち9か所が国や県の史跡に指定されております。これまでの発掘調査による出土品は、県または市町村の教育委員会が保管し、 県立博物館をはじめ地域の資料館等で随時公開されているところですが、引き続き、広く縄文文化の価値を伝えられるよう、県内各地の展示施設との連携強化を図ってまいります。

 最後に、伊勢堂岱遺跡と大湯環状列石の活用につきましては、既存の観光資源や隣県の遺跡も含めた複数の周遊コースの設定が有効と思われますので、観光文化スポーツ部や市町村の観光部局とも連携して、 積極的な情報発信に取り組み、広くPRすることで交流人口の拡大に貢献できるよう努めてまいります。



五 クマ対策について     [知事]


北林たけまさ


 次にクマ対策についてお尋ねします。昨年の一般質問でもクマ対策を取り上げ、市町村や警察とも連携した安全対策や長期的視点に立った環境の整備、復元などを求めました。 県もカメラを使った生息数の調査や様々な対策を行っておりますが、クマの目撃数や被害は拡大傾向にあり、この問題に対しより一層力を入れて取り組む必要性を感じます。

 そこで総務企画委員会では先月県外調査で長野県軽井沢町のクマ対策の取りみについて説明を受けてまいりました。軽井沢町は標高1000メートル前後に位置し、浅間鳥獣保護区の中にありながら、森の中に一万五千戸の別荘が点在し、人とクマの領域が重複している町ですから、 過去にはゴミ集積場所の生ごみを荒らされたり農作物が食害を受けたりといった被害が多発していました。そこで町では、鉄板で覆われたクマ対策用ごみ箱を設置し、農作物被害防除のための電気柵設置に補助するなどクマの出没しにくい環境づくりに取り組んできました。 こうした対策に加えて、軽井沢町で力を入れているのが、クマの「個体管理」です。縄張りがなく、行動面での個体差が大きいクマの保護管理を行うには一頭一頭に着目した対策が有効であると、町から委託を受けているNPO法人ピッキオは言います。 個体管理するため、捕獲したクマに電波発信機を装着し個別に対応方針を決定するための個体情報を収集します。個別の対応方針とは、クマの行動から軋轢レベルを判定し、出没した場所ごとに駆除の対象とするかを判定するのです。 二〇一四年度の数字では捕獲頭数24頭に対し駆除頭数は僅か1頭とのことでした。

 もう一つ特徴的な活動はベアドッグによる追い払い活動です。ベアドッグとは、もともと狩猟犬であったカレリア犬に特別な訓練を施し、クマと人との共存の為に働く犬です。アメリカ人のキャリー・ハント氏がこの犬を使ったクマ対策手法を開拓し、アメリカ・カナダの国立公園を中心に、 ベアドッグを利用したクマの保護管理を行っています。日本国内には2頭しかいませんが、今春6頭の子犬が産まれベアドッグとしての成長が期待されています。 ベアドッグは大きな声で吠え立てクマを森の奥に追い払うことが出来ますが、クマは学習能力が高いため追い払いを繰り返すうちに「いてはいけない場所」と理解するようになるとのことです。 またベアドッグはクマに襲い掛かることはせず、一定の距離を保つように訓練されており、クマも犬も傷つくことはありません。

 ベアドッグを本県で導入することは簡単ではありませんが、犬をクマ対策に活かす考え方は一考に値するのではないでしょうか。犬は縄文時代から人に飼われ野生動物との間に立って様々な働きをしてきました。 田舎では、ついひと昔前までは各屋やの外で犬が飼われていましたが最近は屋内で飼う人が増え、そうした状況がクマの出没と関係があると指摘する声もあります。クマと人が同じ場所で共生することは不可能ですから、 クマ対策の柱は人とクマの領域を分ける事だと考えます。県も「ゾーニング管理」の取り組みを始めていますが、問題はどのようにして、クマに人の領域を分からせ、人は危険なものと認識させるかであります。 県はクマ警報を十月末まで延長しましたが、人間がクマから逃げているだけではクマの生息域が拡大するばかりです。クマを山奥に追い払う取り組みを早急に進めなければなりませんが、 その一つの手段として犬は貴重な存在だと思います。ベアドッグをすぐに導入するのは無理としても、犬の活用を研究し育成することを検討してみてはいかがでしょうか。

 また、クマを追い払う様々な装置の開発や利用、身体を防護する安全用品の使用なども必要と思います。

クマの生態の変化は驚くばかりで、北秋田市中心部の住宅街へも出没するようになりました。現在進めている対策だけでは、クマの変化に対応できず住民の不安は高まるばかりであり実効性のある対策を早急に講ずる必要があると考えます。 担当部局の増強や警察本部との連携強化など、これまでとは次元の違う対応が必要と考えますが知事のご所見を伺います。



知事答弁


 ツキノワグマの人里への出没は、今年度においても頻繁に発生し、人身被害も出ていることから、依然として憂慮すべき状況が続いております。

 県では、昨年度、全庁横断的に対応できる体制を整えるとともに、カメラトラップ法による精度の高い生息数の把握に努めているほか、今年度からは、鳥獣保護管理に特化した新たな班を設置し、クマ対策の専従職員を増員したところであります。

 これまでの対策では、主として有害捕獲に取り組み、その担い手となる狩猟者への支援も行ってまいりましたが、捕獲だけでは、対応しきれない状況にあります。

 このため、人間とクマの棲み分けを目指したゾーニング管理や、クマの侵入を防止する電気柵の設置のほか、クマの生態や遭遇時の対処法を伝える県民向けの出前講座の実施など、ハード・ソフト両面での対策を進めております。

 一方、ツキノワグマは国際的には絶滅のおそれのある種として位置づけられていることから、中長期的には保護の視点も必要であり、人間と野生鳥獣が共生する社会を目指し、本県の魅力である「動物にやさしい秋田」を、 国内外に発信していくことが重要であると考えております。

 こうしたことから、市町村や警察をはじめ、関係機関との連携を一層密にするとともに、来年度には有識者等で構成する協議の場を設置し、専門職員の配置や保護と管理を一体的に担う組織のあり方のほか、 個体管理の有効性やベアドッグの活用、被害防止のための機器の利用など、新たな対策についても幅広く研究してまいります。



北林たけまさ

以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。


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